出版社内容情報
「読んでおかないと恥だから読むのではなく、おもしろいから読む……読書はストックではなくフローである。新しい書物は次々に出され、知識はさまざまに形を変えて人を訪れる。その流れの岸に立って、人は多くを読み、あるものを忘れ、あるものを記憶にとどめる。人の心の中でダイナミックな教養がつくられつつある。/昔、寺山修司は〈書を捨てよ、町に出よう〉と言った。彼はその時、気付いていなかった、書物がそのまま町であることに。」
読書人待望の『読書癖』3巻目。期待にたがわず本巻も、本と読書をめぐる刺戟的でおもしろいエッセー=書評で埋まっている。作家の蔵書や再読の欲望について、吉田健一の文庫本、林達夫・丸谷才一・藤沢周平の魅力など、読書万般、あらゆるテーマにわたる。わけても、クンデラやエーコや谷川健一やル・クレジオの作品を論じた長尺の文章は、論理の明晰とエレガントな行文において、質量ともにTLSのそれに匹敵する書評のお手本ともいうべきものである。読書は孤ならず、本書は人びとを〈読書の共同体〉へといざなう出色のガイドブックである。
池澤夏樹(いけざわ・なつき)
1945年北海道帯広市に生まれる。埼玉大学理工学部中退。1975年から3年間ギリシアに滞在。1987年『スティル・ライフ』で中央公論新人賞及び第98回芥川賞を受賞。詩、小説、評論、翻訳。主な著書は長篇小説として『夏の朝の成層圏』、『スティル・ライフ』、『真昼のプリニウス』(以上中央公論社)、『バビロンに行きて歌え』、『タマリンドの木』(文藝春秋)、『南の島のティオ』(楡出版)、『マシアス・ギリの失脚』(新潮社)、短篇集として『マリコ/マリキータ』『骨は珊瑚、眼は真珠』(文藝春秋)。詩集に『塩の道』、『最も長い河に関する省察』『池澤夏樹詩集成』(共に書肆山田)。エッセー、評論として『見えない博物館』(小沢書店)、『ブッキッシュな世界像』(白水社)、『ギリシアの誘惑』(書肆山田)、『インパラは転ばない』(光文社)、『都市の書物』(太田出版)、『シネ・シティー鳥瞰図』(中公文庫)、『南鳥島特別航路』(日本交通公社出版局)、『エデンを遠く離れて』(朝日新聞社)、『読書癖』全4巻(みすず書房)、『母なる自然のおっぱい』(新潮社)、『海図と航海日誌』(スイッチ・パブリッシング)、『楽しい終末』(文春文庫)、『むくどり通信』『むくどりは飛んでゆく』『むくどりの巣ごもり』『むくどりしゃっきん鳥』(朝日新聞社)、『小説の羅針盤』『ハワイイ紀行』『明るい旅情』(新潮社)、『クジラが見る夢』(新潮文庫)、『未来圏からの風』『やさしいオキナワ』(PARCO)、『沖縄式風力発言』(ボーダーインク)、対論『沖縄からはじまる』(共著、集英社)など。
内容説明
作家の蔵書や探偵の肖像から林達夫・吉田健一・藤沢周平の魅力へ、さらにクンデラやエーコ、ル・クレジオまで、読書万般にわたる出色のエッセー=書評62篇。本書は孤ならず、本書は人びとを「読書の共同体」へといざなう出色のガイドブックである。
目次
作家の伝記
編集は楽しい
大計画
会社の名前
美しいドレス
生活文化の記録
一行の長さについて
正しい映画評
作家の蔵書
蔵書の始末〔ほか〕
感想・レビュー
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