出版社内容情報
全4巻。
「暇な時には手近な本に手を伸ばし、忙しい時におもしろい本にひっかかって舌打ちをする。旅で地方都市に行けば、名物料理おみやげ古道具の類は頭から無視しても古本屋はついついのぞく。つまり、読書や本との交際は趣味や義務や仕事ではなく、性癖なのだ。暇をもてあまして貧之ゆすりをする者がおり、身代を博打でするうつけ者がおり、さんざ女に騙されても好色の気の抜けない道楽亭主がいるのと同じように、世の中には本というものにからめとられる人生もある。つまりは癖、読書癖というものではないだろうか……同じ癖をお持ちの御人ならば少しは楽しんでいただけるかもしれない。そういう本であり、そういう著者である。」(あとがき)
『薔薇の名前』から理科年表、李賀の詩から石川淳の力学へ、また童話からSFへと、扱う対象はじつに多様、まことに壮観である。しかし著者の手さばきはしっかりと一点、すなわち“読みふける喜び”に集中している。書巻の気に充ちながらも風通しのよい文章によって展開する、本と読書をめぐる秀抜なエッセー=書評97篇。
池澤夏樹(いけざわ・なつき)
1945年北海道帯広市に生まれる。埼玉大学理工学部中退。1975年から3年間ギリシアに滞在。1987年『スティル・ライフ』で中央公論新人賞及び第98回芥川賞を受賞。詩、小説、評論、翻訳。主な著書は長篇小説として『夏の朝の成層圏』、『スティル・ライフ』、『真昼のプリニウス』(以上中央公論社)、『バビロンに行きて歌え』、『タマリンドの木』(文藝春秋)、『南の島のティオ』(楡出版)、『マシアス・ギリの失脚』(新潮社)、短篇集として『マリコ/マリキータ』『骨は珊瑚、眼は真珠』(文藝春秋)。詩集に『塩の道』、『最も長い河に関する省察』『池澤夏樹詩集成』(共に書肆山田)。エッセー、評論として『見えない博物館』(小沢書店)、『ブッキッシュな世界像』(白水社)、『ギリシアの誘惑』(書肆山田)、『インパラは転ばない』(光文社)、『都市の書物』(太田出版)、『シネ・シティー鳥瞰図』(中公文庫)、『南鳥島特別航路』(日本交通公社出版局)、『エデンを遠く離れて』(朝日新聞社)、『読書癖』全4巻(みすず書房)、『母なる自然のおっぱい』(新潮社)、『海図と航海日誌』(スイッチ・パブリッシング)、『楽しい終末』(文春文庫)、『むくどり通信』『むくどりは飛んでゆく』『むくどりの巣ごもり』『むくどりしゃっきん鳥』(朝日新聞社)、『小説の羅針盤』『ハワイイ紀行』『明るい旅情』(新潮社)、『クジラが見る夢』(新潮文庫)、『未来圏からの風』『やさしいオキナワ』(PARCO)、『沖縄式風力発言』(ボーダーインク)、対論『沖縄からはじまる』(共著、集英社)など。
内容説明
読書とは趣味や義務や仕事ではなく、それはひとつの性癖なのだ。石川淳からミステリー、理科年表、童話まで、本と読書をめぐる風通しのよい97のエッセー=書評。
目次
長い歴史の楽しみ方
球場の雰囲気
裸体のストーリー性
記号論学者のミステリー
天文は楽し
数時間のヴェネツィア
恋愛小説
無用の知識
戸田ツトム『断層図鑑』
山根一真『変体少女文字の研究』
日野啓三『砂丘が動くように』
小山政弘『夢の国日誌』〔ほか〕
感想・レビュー
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