内容説明
異端裁判の舞台で、交差し浸透する二つの文化。審問官の文化と民衆の文化と。記録の断片から、ジグソー・パズルのように過去を構築する歴史家ギンズブルグ。
目次
第1章 夜の合戦
第2章 死者の行列
第3章 審問官と魔女の間で
第4章 サバトへ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワッピー
20
16世紀に北イタリア・フリオリにおいて行われた異端裁判から浮かび上がる不思議な記録。胞衣を被って生まれてきた者には不思議な能力があり、夢の中で同じ能力を持つ仲間たちと四季の斎日に出かけていき、ウイキョウの枝を持って敵対するストレーガと戦う。彼ら=ペナンダンテが勝てば豊作が約束され、逆なら凶作になるという模擬戦の構図、または女神に率いられて死者と一緒に夜の道を徘徊する(幽霊の騎行)というイメージ。キリスト教以前からある結社的な儀礼を示唆し、ペナンダンテは魔女の呪いを見破ることができると広く信じられていた。↓2019/03/27
てれまこし
12
胞衣(羊膜)にくるまれて生まれてきたベナンダンテと呼ばれる者たち。四季の斎日期間中に霊魂が肉体を脱け出し、ウイキョウの枝を武器として魔女や魔法使いたちと戦う。豊作か凶作かをかけて。彼らの信仰は中央ヨーロッパに広く普及していたと思われる信仰体系とのつながりをうかがわせるが、宗教改革時の異端への関心の高まりを背景として審問官たちの圧力によって魔女のサバトという図式に無理やりはめ込まれて解体していく。農耕祭儀と死者の行列が結びつけられているのは、農業が死と再生という枠組みで理解されていたからであると思われる。2022/10/17