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内容説明
「女性が小説なり詩なりを書こうとするなら、年に500ポンドの収入とドアに鍵のかかる部屋を持つ必要がある」経済的自立と精神的独立を女性の創造活動に不可欠の条件とするこの主張は、誰にも容易に理解できるものであろう。しかし、この長篇エッセーの持つ魅力は、ウルフがこの結論に至ったプロセスを、丹念かつ率直に辿ってゆく、その軽妙・辛辣な語り口にある。想像力の翼にのったウルフの知的飛翔はとどまるところを知らない。愉しく巧みな話の流れに引きこまれて、読者はいつの間にか彼女の論旨、すなわちその家父長制批判と、女性の手になる文学伝統の継承を納得することになる。本書は、「フェミニズムに霊感を得た彼女の最も才気溢れる作品の一つ」(E.M.フォースター)である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
チャー
9
物語を書くこととその環境について記された書。1800年終わりから1900年初めの頃を生きた著者が、女性が物語を書くという点において経済的自立と精神的自立が不可欠であるという点を、過去の作者や社会背景を描写しながらエッセイという形で記している。本書執筆の経緯として女性と小説という講演依頼が記されているが、そこから展開される内容はとても深い。現代との違いも去ることながら社会の認知について考える良いきっかけとなった。求める環境が必ずしも手に入らない状況を思うと、現在が如何に満ち足りた環境であるかを痛感する。2020/05/22
at@n
3
軽やかに思考が飛翔する。読んでいて心地よく楽しかった。全ての女性に歴史と物語を与える書。読んでよかった。2022/07/28
Darbytime
2
フェミニズム関連の本で知って読了。土壌が無いと才能があっても発揮できない。だから経緯を考えずに才能の性差は語れない。そして土壌が整ってきたんだから才能を活かせというメッセージ。この人の思想を表するのに適切かわからないが、なんとも雄々しい。以下覚書:称賛も非難も意味がありません。否、評価するという気晴らしは楽しいかもしれませんが、それはあらゆる仕事の中で最も無益なもので、価値測定者の判決に屈するのは、この上なく卑屈な態度です。あなたが書きたいことを書いてさえいれば、それこそが大切なことです。2020/07/05