内容説明
この世がどう移り変わっても、考える人は揺るがない。哲学=考えることは、どんな困難も超えていく。自分が生きて存在していること。この圧倒的な不思議について。
目次
1 考える日々(私はいつでも本気である;ソフィーの馬鹿、ともう一度言いたい;少しも変わらずここにいる;生活に立脚する、とはどういうことか;万有の真相、曰く不可解 ほか)
2 考えない人々(考えればわかることなのだが;真実をめぐる本末転倒;情報化をきわめたところで;憂鬱な娯楽の時間;がん論争に欠落しているもの ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
57
雑誌(1998年「考える日々」、1997年「考えない人々」)に連載されたコラムを収録。時事的なテーマを素材に論考。例によって池田晶子節炸裂。一見、屁理屈、世間に斜に構えて、恰も揚げ足を取るように事物を見ているようであるが、さに非ず。著者は素直に純粋に形而上学的に考えを巡らせ突き詰める能力に長けている。物事のもっと奥、根本、中心を考えよと。経済・生命・情報至上主義に陥ってしまい、多忙は怠惰の隠れ蓑状態で、易きに流れ、深く考えようとしない現代人に、著者は警鐘を鳴らしてくれている。2017/05/03
団塊シニア
38
「生きることを考えることが仕事」という作者、まさに考えること、言葉で伝える重要性を追求した生き方は読み手にしっかり伝わってくる内容である。2015/05/06
双海(ふたみ)
23
我が家には電話とファックスしかなく原稿も手書き、という著者のもとに担当編集者から当時話題だった「たまごっち」が届いたというところで笑ってしまった。池田さんさぞかし驚かれただろうなぁ(笑)「たまごっちで哲学する」などと(珍しく?)冗談を言っている。それはさておき、思想と哲学を峻別しているところが印象に残った。思想は外から持ってきて取り付けることができるが、哲学にはそれができない、云々。思想は伝播するが、哲学は伝播できない、など。2016/08/18
いろは
16
私は池田晶子のファンである。彼女の作品を読むときは、ウキウキ、ワクワク、エクスタシーを感じるほどである。しかし、その彼女が、世間の事件や流行に興味がないし、哲学しないというのが本当のことであると思ってしまった。それは、酒鬼薔薇聖斗のことを、「少年A」とするのはいいが、「魔物」と言い表したことに、強い反発を感じた。さらに、この作品に登場する精神科医までもが、『別の世界の人間である』と言っている。この事件は少年Aの性癖で、彼は魔物ではなく、同じ世界の人間なのだ。事件を考えず、哲学しないとは、こういうことか。 2017/11/12
アマヤドリ
16
毎日憤りながら考えたり感じたりしていることがそっくり、痛快なまでにことばにされていた。非常に面白く読んだ。2016/03/22