出版社内容情報
武田・上杉がしのぎをけずる戦国の山野を跋渉する放浪の民・渡り。集団を離れた老渡りは差別、孤独死が常態の戦国の世を一人行く。実力派作家の感動の力作。
内容説明
一所に定住せず、山野を渡って生きる放浪の山の民。武田晴信、長尾景虎が台頭し始めた上信越の山野を、老渡り・月草は集団を離れ、独り北へ向かう。亡き妻が遺骨を埋めて欲しいと望んだ、あの山桜の木の下まで。
著者等紹介
長谷川卓[ハセガワタク]
1949年神奈川県小田原市生まれ。早稲田大学大学院文学研究科(演劇専攻)修士課程修了。1980年、「昼と夜」で第二十三回群像新人文学賞受賞。1981年、「百舌が啼いてから」が芥川賞候補となる。2000年、『血路 南稜七ツ家秘録』で第二回角川春樹小説賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はにこ
26
姥捨てになる60歳を前に自ら逆渡りに出る月草。亡き妻の願いを叶える為の旅だが道中が本当に厳しい。犬に襲われ人にも襲われ、救おうとしても報われず。。それでも生き延びる月草の生命力に脱帽。これ以上月草をいじめないでと願いながら読んだ。最後の桜の描写はとてもキレイ。2021/03/17
ベルるるる
22
生きている限り、死にかけようが苦しかろうか、生き続けるしかない。過酷な戦い、理不尽な死、そんな事の連続。そして月草は亡くなった妻との約束の地へたどり着く。満開の山桜の花びらが雪のように降り注ぐ。 残酷なエピソードばかりなのに、ロマンチックな話に思える。桜の花びらが舞い散る中に立ち、亡き妻と会話する月草がそう思わせるのだろう。2016/05/04
ゆう
22
図書館本。山の民の月草。山を渡り歩く彼の部族は60歳になると山に置き去りにされるしきたりがある。亡き妻との約束のため、月草は60歳を目前に仲間から離れて逆渡りを始める。道中これでもかというほど人の死を目の当たりにしながらも生き延びようと懸命に行動する月草の頑張りがなかなか報われる雰囲気にならなくて、やるせない気持ちで読み進めたけれど(しかも描写がわりとエグいし…)、最後にたどり着いた場所で救われた気がした。生きることも死ぬことも、どちらにしても辛いことの多い時代だなぁと感じる。2014/11/14
ドナルド@灯れ松明の火
12
初長谷川卓。1章「戦働き」では、あまりの体言止めと細切れ過ぎる説明と会話で読むのを止めようかとさえ思った。2章からは幾分文章がわかりやすくなった。山の者である月草が年を取って、妻の遺骨を笈に入れ自ら姥捨て場所に赴く。艱難辛苦の末に妻と約束した山桜にたどり着くシーンは感動する。武田軍との戦闘シーンや耳千切れの山犬との生死を賭けた戦いの場面は臨場感が凄かった。山の者の単独行なので薬草取り、魚獲りなどの描写がアウトドアライフにも役立ちそうだ。2012/03/04
蕭白
11
主人公の年齢のせいか、はたまた各話で主人公の頑張りがあまり報われなかったせいか、とても静かに、切なさいっぱいで展開していきました。その分、最後の桜の場面は清々しさで胸がいっぱいになりました。2014/08/12