内容説明
離婚協議中の両親の都合で、祖父のいる東北の田舎に預けられた千秋、美和、颯太。町に台風が訪れた日、美和は水たまりに映る不気味な女の姿を見る。それが不可解な事件の始まりだった。押入れから出てきた六十年前の日記、相次ぐ少女の失踪、奇妙な映画のフィルム…交錯する現在と過去に翻弄されながらも、千秋たちは真相に迫る。圧倒的な世界観で全選考委員を魅了したピュアフル小説賞「大賞」受賞作。妖しくも美しいひと夏のミステリー。
著者等紹介
倉数茂[クラカズシゲル]
1969年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。学術博士。専門は日本近代文学。2005年より5年間中国で日本文学を教える。2010年、「黒揚羽の夏」にて、選考委員の満場一致で第1回ピュアフル小説賞「大賞」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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dr2006
45
夏休み、両親の不和の為に東北の田舎に住む祖父のもとに預けられた千秋、美和、颯太の兄妹の物語。ミステリー中心だが廃鉱山の町が辿った歴史が背景にあって社会派小説とも言える。台風一過のある日、千秋は山奥の龍ヶ淵の底に一人の少女が沈んでいるのを見つける。町で知り合った姉妹と共に真相を追うのだが、終始中2千秋と小5美和の視点で描かれていて、成長期YA故の歯がゆさと無鉄砲さが上手く表現されていると思う。廃れ形骸化してゆく町はどこか排他的だ。不幸せに衰退したせいかもしれない。心情の描写が丁寧。濃密な世界観に圧倒された。2025/06/18
ひめありす@灯れ松明の火
45
あっちこっちジグザグばらばらと、ジグソーパズルのモザイク欠片をかき集めて作ったみたいに、見えそうで見えない真相。繋がってそうで繋がっていない物語。どれも散逸しすぎているかな、という印象はありました。表現は幻想的でそれでいて俗悪的で、グロテスクだけどどこか純粋な輝きに満ちています。圧巻だったクライマックスの5頁に渡る文字の羅列は気持ちが悪すぎて逆に気持ちがよくて、やっぱり気持ちが悪い。全体に、気持ち悪しぐ手気持ちがいい。というのが一番の印象。唯島シスターズがファイアーシスターズに見えたのは私だけでしょうか?2012/07/04
信兵衛
28
余りに濃密、凄惨過ぎて仰け反るような思いがありますが、最後は子どもたちの間にそれぞれの成長と、固い友情が結ばれたらしい様子に、安堵感と気持ち好さが広がります。2021/09/01
とも
26
★★★☆離婚危機の子供たちは、田舎の祖父に預けられる3兄弟。その街について直ぐに、次女の美和は水たまりに恐ろしい女の姿を、長男の千秋は少女が川に沈む車に少女の死体を見つけるそこに過去にも少女の誘拐や殺害事件があった事がわかり、。間違いなくやばい田舎。そこで出会う地元の有力者の姉妹とともに、少年探偵団張り事件解明がはじまる。ミステリーでもあり、ホラーチックでもあり、青春小説でもありで、どっちつかず感は否めない。2019/08/27
yourin♪
21
狂気に喰われた者と喰われずに留まった者・・・。 親の都合で東北の田舎に住む祖父の家に預けられた3人兄弟のひと夏の冒険・・・と言うには危険すぎる冒険。 そこは昔、鉱山だった。60年前に起こった少女誘拐殺人事件と今起こっている事件に関係はあるのか? なんかいろんな意味でドキドキしながら読んだw 装画のスカイエマさんを追っかけ中♪2012/01/17