出版社内容情報
第11回江馬賞受賞 近世における箪笥の出現=箱から抽斗への転換に着目し,以降近現代に至るその変遷を社会.経済.技術の側面からあとづける。著者自身による箪笥製作の記録を付す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アメヲトコ
6
日本の箪笥の歴史についてまとめた本。伝統的家具というイメージのある箪笥も、その発生は17世紀後半、意匠的に花開くのは幕末から戦前期と意外と新しかったりします。箪笥生産の技術や地域性と、それを生んだ社会背景の説明も丁寧で説得力があります。著者自身が加茂市の箪笥店で体験修業したルポも面白いです。そう言えば箪笥とはすっかり縁のない生活となってしまいました。2018/02/01
tnk
0
調べものに使ったので最初のほうしか読んでいない。 16世紀末から17世紀末にかけて、収納家具は葛籠→車長持→箪笥と変化する。これは経済成長が庶民の生活にまで波及し、住宅であれば財産、店舗であれば商品が量・種ともに激増したことによる。 最も重要なのは箪笥の普及である。車長持までは単なる箱の巨大化という変化であった。しかし巨大化は限界を迎え、また収納物品の種類が多様化し分類が必要になった。箪笥の誕生においては抽斗の集合体への転換という質的変化が観察されるのだ。ここに、経済・社会的な近世への転換が見出される。2015/11/05
kenitirokikuti
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第1章「箪笥の誕生」から。お夏と清十郎の話。元禄はじめの西鶴『好色五代女』では盗まれたと思われていたお金が車長持から出てくる。それが35年後の近松の作品では箪笥になっているのだという。2014/12/05