内容説明
中世の人々は、いかに争闘し、苦悩し、享楽し、生き、死んでいったか。嗅ぐ、触れる、性愛、排泄、女、老人、子ども、履物、装い、遊戯、作法、儀礼、信仰、呪術、地獄…。絵巻物や絵図が語りかける、社会関係から日常生活の細部にわたる意味と謎を読み解いて、歴史図像学の出発を告げる。
目次
民衆の姿・しぐさ・行為(「異香」と「ねぶる」;『天狗草紙』における一遍 ほか)
「場」を読む(春の年中行事;市の光景 ほか)
シンボリックな風景(物くさ太郎の着物と髻;「犬」と「烏」と ほか)
荘園絵図は語る(荘園絵図の世界;絵図上を航行する帆掛船 ほか)
終章 絵画史料を読むために
付章 図像の歴史学
著者等紹介
黒田日出男[クロダヒデオ]
1943年、東京生まれ。文学博士。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。東京大学史料編纂所教授、所長を経て、現在、同画像史料解析センター長。専攻は、日本中世史・近世史。絵巻物・絵図などの絵画表現のなかに潜んだ歴史の諸側面を読解・分析して、歴史図像学、絵画史料論の構築をすすめ、多くの成果を発表している
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
14
絵画史料の読み解きが楽しい一冊。絵巻物、御伽草子、荘園絵図と様々な媒体を扱うことで飽きさせない。ただ一つ一つの論考は短いのでサクサク読めて腹八分目と思うか、物足りないと思うか。その後の著者の活躍を見ると、まずはご挨拶な感じの内容なのかも。終章の増補部分は、この分野の第一人者としての矜持を感じる部分もある。文庫なので仕方がないが、テーマがテーマだけに掲載されている図像が小さく、見づらいのだけが難点。著者の指摘が細かいだけに、なかなかその視点を共有できないもどかしさがある。2023/09/19
水菜
3
中世の絵図から当時の社会や行動を読み解く歴史図像学の本。「民衆の姿・しぐさ・行為」が面白かった。今まで巫女の話を読むときに想像していた現代風巫女さん姿は、中世の巫女姿は違っていたらしい。巫女さんってわりと派手だったのね。文章からだけではわからないビジュアル的な歴史も面白い。カラーで見たいなあ。地獄絵は昔、絵本に載ってたやつ思い出した。確かに灼熱地獄ばっかり描かれていたような。「荘園絵図の世界」はイメージしにくくて読むのに苦労した。うーん、地理は苦手だ。あと、紙幅の都合なのだろうが、挿絵が小さい!細かくて見2013/10/08
斑入り山吹
3
日々の暮らしで当たり前だったことが、時代が変わるとちっとも自明ではなくなる。そこをどうやって汲み取っていくのか、なるほどのめり込むわけだ。周辺を全く読んだことがないわけではなかったので、なかなか興味深く読めた。しかし、一番面白かったのは、最後の「平凡社ライブラリー版あとがき」だ。強い情熱がなければ、この新しい分野を開拓することは叶わなかった、というようなこと。文庫サイズは読み易くて良いが、図版を見ながら本文を読みたい所なので、できれば大判カラーの図がふんだんに使われた本の方が、理解はしやすいよなぁ。2013/04/08
kazuya
2
絵画史料論の大家である黒田氏による、絵画史料論の(当時の)まとめ的な位置づけとなる一冊。 『一遍聖絵』のような絵巻のみならず、御伽草子、荘園図といった絵画史料も使用しているのが特徴的。2022/03/21
にこ
1
絵巻からもこんなにも情報があるなんて驚いた!他にも読んでみたい。2019/02/21