内容説明
天空の色を身にまとい、現世と彼岸を往き来する青い鳥とはいったい何なのか。星座と色彩、人参果、女人国伝説、『シナ図説誌』など、中国史の周辺を彩る数々の魅惑的な事物を自在にめぐるエッセイ。
目次
1 色彩と星座
2 至上の食卓
3 女人国
4 書物偏愛
5 ぺんぺん草
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
327
著者はいわば日本の三大博学のお1人。まずはフランス文学を基軸とした澁澤龍彦。次いでドイツ文学の種村季弘。そして、中国文学をバックボーンにした中野美代子。いずれも博覧強記、文筆の冴えもまた縦横無尽だ。他の御二方にしてもそうだが、洋の東西いずれに基盤を持っていたとしても知の範疇は広大だ。ここでも著者には薬籠中の『西遊記』は言うに及ばず、12世紀フランスの『ブルターニュのレ』からオックスフォードの『宮廷閑話集』まで言及する。食に関する造詣も深いが、人肉食に著者の興味の中心がありそうなところが何とも怖い。2017/04/19
∃.狂茶党
8
極めて古い時代の本や、失われた本などから、博物学的想像力を膨らませていく。 わりと下ネタ(と食人ネタ)が多い。 しかし、黄文雄の名前が出てくるのは参った。 ”学問とは、このように、形式的にも、豊かであらなければならない。” いわゆる感性を養うもので、作者より下の世代では、怪獣や妖怪が、そう言ったことをになっただろう。 知に淫する。 これこそが実学の人が、学問にかぎとるいかがわしさで、魅力であると思う。 ”論理化とは、申すまでもなく、想像力の産物なのだ。” 2022/04/02
しずかな午後
7
中国文学の碩学、中野美代子先生の本。著者の本は初めて読んだのだが、読み味は澁澤龍彦などに近い。中国文学の、不思議なモチーフたちーー赤子が実る樹、女人国、纒足、海獣などーーを縦横無尽に論じ、奇妙な神話伝承のその背景を探っていく。当たり前のように大量の本から引用をしてくる、その博覧強記っぷりがすごい。そしてすごく楽しそうに書く。後半のブックレビューでは、『本草綱目』『支那図説誌』を取り上げたりするのだが、よくもこんなに面白そうに書けるものだと感心する。埋もれた本の魅力を再発見することは偉大な仕事だと思う。2023/02/12