内容説明
美術作品を見るとは、どのようなことなのか。作品に感動するとはどのような体験なのか―。美術と心の関係を真摯に探った快著。
目次
第1章 漱石先生の「心」論
第2章 「心」とは何か 知情意論の展開
第3章 知の美術
第4章 意の美術
第5章 情の美術
第6章 心のリズム
第7章 心の裏側
第8章 現代美術と心
エピローグ 心はひとつひとつ
付録 夏目漱石「文芸の哲学的基礎」
著者等紹介
古田亮[フルタリョウ]
1964年東京都生まれ。93年東京国立博物館研究員。98年東京国立近代美術館(01年より主任研究官)を経て、06年に東京藝術大学大学美術館助教授に就任、現在准教授。専門は近代日本美術史。2010年には『俵屋宗達 琳派の祖の真実』(平凡社新書)で第32回サントリー学芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぷーたろう
3
美術作品を見るとはどういうことなのか、夏目漱石の訴えた「意識の連続」や「知情意(ちじょうい)とその理想」という考え方を参考にして、近代日本絵画の歴史を振り返るという著者の試み。因みに心の作用を「知・情・意」の3つに分類する考え方は当時の心理学の主流であったとのこと。後半は知情意以外の心のリズム及び無意識の作用と美術の関連を考察。最終章は現代美術の表現と心の関連についても述べられており、これが個人的には最も面白いと感じました。2023/07/14
nizimasu
3
絵画を鑑賞するためにどのようにアプローチすればいいのか。何も先入観なしに見るのも一興だが、著者はそれを夏目漱石が東京芸大で講演した「文芸の哲学的基礎」を上げ、そこから議論を深めていく。漱石は当時の最新の哲学である知情意を用い、絵画を鑑賞することを勧める。これも明治以降の歴史からみれば、西洋絵画を取り入れ、それがある意図を持って作成され、それが表現として成立していくというプロセスと対照的に描いているのだ。さらには、ここからシュールレアリスムや現代美術も包括した解説でなかなか親切な内容でした2014/05/01
メカメカ
0
美術の鑑賞について述べたものだが、比較的読みやすい。あまり複雑な理論を入れずに平易な言葉で纏めてくれている。主に美術を見た際の心の反応、また作家自身の作品に対する意識を知情意という分類に分けるなどして説明しているが、たぶん実際読んだら意外なほどしっくりくるのではないかと思う。漱石の講演を下地に論を立てているが、確かに色々なジャンルの美術があってもある程度体系化はできるんだなと感じた。自分が惹き込まれると感じる作品が大事なのだと理解した。2017/11/24