内容説明
幼馴染みがヤクザの幹部になっている徳持刑事は、なにかと癒着が疑われていた。その徳持刑事がふいに消息を絶ち、翌日にホテルで死体となって発見される。同僚の死に対して必死の捜査をつづける刑事たちは、ついに幹部の逮捕にこぎつけた。だが、留置場に入っていた彼が…。本格仕立ての警察小説と倒叙形式によって浮き彫りにされていくひとりの警官の心の軌跡。多彩なミステリを展開する作者の斬新な構成の意欲作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
187
チンピラに恐喝されたバーのマダムの聴き取りに行った刑事が遅くなっても戻らず、同じ課の刑事達が夜の街へと捜索に出る。この冒頭からずっと刑事の行動や心理を辿る…いわゆる警察小説である。厳密な定義は知らないが、刑事の内面に踏み込んだ推理小説は社会派ともよばれた。コツコツと足で情報を集め、じりじりと真相に迫り、社会の裏にある不正を暴き出す。そういう作品は黙ってついていくより仕方ないと思っていたが、本作は、犯行動機からアリバイまで、へたなパズラーよりもずっと考えさせてくれる。最後に犯人視点に切り替わるのもよかった。2024/01/21
涼
8
http://naym1.cocolog-nifty.com/tetsuya/2018/06/post-421e.html2018/06/16
hit4papa
7
本作品はいわゆる暗黒小説です。横山秀夫さんに先駆けたかのような、刑事の生きざまを掘り下げた警察小説でもあります。殺人犯が吐露する切羽詰まった苦悩の日々。絶望という言葉がふさわしい幕の閉じ方は、読了後もしばし、重苦しい余韻を残します。犯人探しだけに終始していない構成の妙が効いている作品です。
ren5000
6
昭和30年代に書かれたというのにいま読んでも全然古臭さを感じさせない。作者のあとがきにも書いてあるけどこの頃は悪徳警官というジャンルの刑事ものがあまりなかったということにびっくりしました。今なんて現実でも右向いても左向いてもそんなのばっかりなのにね(笑)2013/11/05
泥水 叫狼
4
謎解きものとしてのプロットは現代から比較するとシンプル過ぎかなと感じました。しかし、読者が犯人が分かりそうになる時に場面を変え始め、第二部に移す辺りは構成の巧さに感心します。ゴメスの名はゴメスのような名作とは思えませんが、高いレベルで楽しめると思います。2014/01/19