内容説明
祖国は、ここにある。少年は細い指で自分の胸を差す。国を追われ、命からがら逃れてきた異国の若者たちの居場所は、もはやここにしかないのだ。ドラッグをめぐり、揺れる新宿。彼らはそれに巻き込まれながらも、その少年のカリスマ性に夢を託す…。「R/EVOLUTION」=革命小説シリーズのVにあたる第2弾。書き下ろし掌編「ストレイキャッツ」収録。
著者等紹介
五条瑛[ゴジョウアキラ]
1999年『プラチナ・ビーズ』でデビュー。01年『スリー・アゲーツ』で第3回大藪春彦賞を受賞
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感想・レビュー
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naoっぴ
71
シリーズ二作目。カンボジア難民の「鳩」の物語。祖国を追われて日本に入国してくる人々の苛酷な人生は、平和ボケの私にはファンタジーにしか思えなかったけど現代の話なんですよね…。祖国から逃げ日本国籍を取得した多国籍の彼らの居場所は社会の裏街道。その欲望に満ちた世界の中でそれでも夢を捨てずに生き抜く姿を描くハードボイルド&ノワール小説。革命をおこそうとか嵐を起こそうとか、サーシャは彼らとともに何をしようとしているのか気になります。2017/10/29
扉のこちら側
18
単行本で初読、文庫で再読。2014年1097冊め。文庫書き下ろし短編はすみれとキラの出会い。2014/11/29
Rin
16
プラチナビーズで最初と最後に出てきた餓死寸前の子供が登場します。しなやかに、そしてとても強く生きている。祖国は忘れず、でも日本に密入国しているが、生きる場所が必要だと、さらに強くなっていく。「この国の人間は、ここをあまり大事にしていない。悪い所ばかりを大きな声で言って、いい所に気づかない」という彼の言葉や、食べる物に困らないという事の意味。多国籍の人々の生き難さなど、随所に「考えろ」といわれているようで、じっくりと読んだ一冊です。2014/06/19
藤月はな(灯れ松明の火)
12
(傲慢な感想です)再読です。「プラチナ・ビーズ」で登場してきた北朝鮮出身のすみれやポル・ポト政権内のカンボジアを逃げて生き延びた鳩の抱えた孤独や有り余る富にあふれた日本に対する複雑な思いに日本で生まれ育った者としてはそれを知ろうしなかった自分や日本人の無関心の罪深さに「ごめんなさい」とこの世界にいる人たちに謝りたくなりました。鳩と亜由の似た者同士でありながら離反するしかなかったことにもとても悲しかったです。2010/09/28
minitank
8
五條瑛さんの全10巻からなる革命シリーズの第2弾。今回の主人公はカンボジア難民の鳩と、北朝鮮からきた少年・すみれ。新宿を根城に窃盗や盗品売買でその日暮らしをしていた鳩が、半ば強制的にヤクザやマフィアの抗争に巻き込まれていきます。スピーディな展開に一気読み。それに前作の主人公である亮司もいい感じの青年となって再登場。亮司好きの私としてはすごく楽しめた一冊でした。2014/02/08