内容説明
新進作家、待居涼司の出世作『凍て鶴』に映画化の話が持ち上がった。監督に抜擢された人気脚本家の小野川充は『凍て鶴』に並々ならぬ興味を示し、この作品のヒロインには、かつて伝説的な自殺系サイト〔落花の会〕を運営していた木ノ瀬蓮美の影響が見られると、奇抜な持論を展開する。待居の戸惑いをよそに、さらに彼は、そのサイトに残された謎の解明が映画化のために必要だと言い、待居を自分のペースに引き込もうとしていく。そんな小野川に、待居は不気味さを感じ始め―。全篇に充ちた不穏な空気。好奇心と恐怖が交錯する傑作心理サスペンス。
著者等紹介
雫井脩介[シズクイシュウスケ]
1968年愛知県生まれ。2000年に第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』でデビュー。04年に上梓した『犯人に告ぐ』がベストセラーとなり、その年の「週刊文春ミステリーベストテン」第1位に輝く。さらに05年には同作が第7回大藪春彦賞を受賞し、07年、映画公開を前に文庫化すると、ミリオンセラーに。今、最も新刊が待たれる作家の一人である(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆみねこ
100
ある文学賞を受賞した待居の小説「凍て鶴」を映画化する話が持ち上がる。作品を気に入り、監督・脚本・主演を買って出たのは新進気鋭のクリエーター・小野川。読み始めは小野川の一方的な思い込みとテンションの高さが嫌で中々物語に入りこめなかったけれど、だんだん繋がりが見えてきた後半はスピードアップして読めました。しかし、どの登場人物も病んでいて共感できず。中橋刑事が真相を暴く日が早く来ますように。2016/11/19
ダイ@2019.11.2~一時休止
76
小野川の鬱陶しさにちょっとイライラ。作家の方にも感情移入できず、エンドはあれでいいの?2014/05/24
したっぱ店員
71
小説家が自作の映画化を担当する脚本家に振り回され、付きまとわれ、気味悪いなあ…と読み進める。途中変な宗教まがいの団体が出てきて、ますますの気味悪さ。そしてラストはすかっとさせてくれるかと思いきや。もう全員気味悪いよ。面白くないわけじゃないけど、とにかくしんどかった。2018/02/04
しろいるか
66
これといった伏線や予想外のどんでん返しがあるタイプの作品ではないけど、自殺願望がある人の死生観や、待居と小野川のまるで合わないやり取りなど興味深く一気に読めた。『落花の会』だけでも一作品できそう。小野川のあつかましさ、他人との距離の異常な近さにいらつきを通り越して笑えた。触れてはいけないところを本能的に嗅ぎつけちゃうのはある意味天才。でも一緒に仕事はしたくないかも(笑)終盤は、一部、意外な展開だったし、小粒ではあるがとあるアイテムの使い方が効いてたりして総じて面白い作品だった。2010/07/21
オーウェン
60
作家待居涼司が書き上げた「凍て鶴」が映画化されることに。 監督脚本を担当する小野川は、木ノ瀬蓮美という自殺サイトによって死んだ女性を中身に入れこもうとする。 その詳細を知るためライターの今泉が調査するのだが。 小説の中の小説というメタ構造。 そこに対して違和感をところどころ入れ込みながら映画化へ。 真相はそこまで捻ったものではないが、結末に選んだ選択は興味深い。 真相を知ったうえでの映画化では意味合いが変わってくるというもの。 不穏を残して終わるが、そういうモヤっとしたものを体現している小説。2022/09/25