内容説明
七四四年、盛唐の都・長安の春。唐は玄宗皇帝の治世も三十二年に及んでいた。陽気に誘われて二人の男が、曲江のほとりを歩いていた。一人は後世に詩仙といわれた李白。もう一人は、玄宗の身近に仕える日本人阿倍仲麻呂。彼らは亭で盃を傾けながら、旧時を懐しんでいた。折から水面を渡る春風が亭を吹き抜けていく。すると、一人の男が亭に近づき、崩れるように倒れ込んだ。仲麻呂が抱き上げると、男は「昇龍…」と、謎の言葉を残して死んだ。これが事件の発端であった。阿倍仲麻呂と李白がコンビで暴く、唐王朝をゆるがす大謀略とは。書下し長篇推理。