内容説明
近世剣術「新陰流」の優れた術理を明快かつ詳細に説き、身体論、日本人論として秀逸な一書。
目次
第1章 日本刀による兵法(なぜ“日本刀”は生まれたのか;剣技が“兵法”となった時代 ほか)
第2章 新陰流の成立(剣法に流儀があること;上泉伊勢守の開眼 ほか)
第3章 太刀筋の体系(何を「太刀筋」と呼ぶのか;青岸の太刀筋 ほか)
第4章 立合いの心得(「十文字勝ち」のこと;小転のこと ほか)
著者等紹介
前田英樹[マエダヒデキ]
1951年生まれ。立教大学現代心理学部教授。映画、文芸、美術、武術等をテーマに批評的散文の論考著作を多数執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
25
新陰流の刀法(7頁)。打刀拵:室町中期~刀を両手で持つことを想定した柄(30頁)。刀身一如:刀の運動に身体が消し取られる感覚に達しなければ、兵法の理想はわからない(37頁)。勝つ:殺すのではなく、ひとつの世界へと相手を誘い、説得すること(42頁)。敵に随う:新陰流では随敵(ずいてき)の教えとして重んじ、相手が陽なら内側から崩す陰(78頁)。 和卜(わぼく):相手の打ちに協力するかのように、上に乗り、瞬時に推し落とす勝ち方(131頁~)。次から次へと技が繰り出される構成。2015/05/07
門倉或刀
4
「拍子」を覚えた。「当てる拍子」、「付ける拍子」、「越す拍子」。あとは稽古するのみ。小太刀と二刀を重点的に2015/11/24
門倉或刀
4
剣術の参考書として読了。最近つかみつつもわずかに分からなかった部分、間合いとの関係における太刀筋。そのヒント、いや、答えがこの本から得られた。勝つべくして勝つ、もはや争う必要がないのではないかと思うほどに。そのための道を新たに得た。具体的には二刀の使い方、相手の斬り込みの深浅との対応、そしてなによりも「勝ち方」という概念。これが剣聖の遣いし剣か。新陰流、その核心盗ませてもらう。→コメントへ2015/10/31
ポカホンタス
3
著者はさまざまなジャンルを扱う批評家。かつてこの著者のセザンヌ論を読もうとしたけどその独特の文体についていけなかった。この本は面白かった。日本刀のルーツは農耕用具であり、狩猟民族のように生き物を殺すのではなく、穀物を育て、食べ、植物のサイクルに自らが入るための神器だという。著者自身柳生新陰流を長年鍛錬していて、その経験から新陰流の剣さばきなども具体的に紹介してくれる。確かに農作業をするときの鍬の使い方の参考になる。その他別の局面にも大いに参考になる。著者の独特の文体も新陰流なのかもしれない。異色の武道論で2016/05/16
ワッピー
2
日本の刀を農耕と結び付けて説き起こし、新陰流の原理である体軸のコントロールを詳説。その論理性と円環・角度など幾何学的精妙さは、いかなる武道修行とも無縁の屁たれのワッピーにもおぼろげながら伝わってきて、思わず動画で新陰流を検索してみてしまったほど、著者の筆致に魅了されました。これはちゃんと理解するまで読み込まなければ(実際に理解できるかは別として)と久々に思いました。ワッピーにとっては新しい世界を開く扉本かも・・・2014/08/09