出版社内容情報
世界最大の広場は、1949年まで「無名の空間」だった。なぜここが中国史の主要な舞台となりえたのか。新進気鋭の建築史家が、中国都市史の巨大な空白に挑む。
内容説明
中国近代革命の中心地は、1949年まで「無名の空間」だった。新進気鋭の建築史家が膨大な現地資料を読み解き、中国都市史の巨大な空隙に挑む。貴重な図版を多数収録した、日本初の本格的研究。
目次
序章 「革命史観」からこぼれ落ちた歴史
第1章 禁地開放
第2章 広場を奪い合う―五四運動とその後
第3章 揺れる位置づけ―一九二〇~三〇年代の建設と計画
第4章 メディアとしての天安門
第5章 一九四九年に切断線を引く―中国共産党とその「空間政治」
第6章 東西軸の創出、南北軸の延伸
終章 「施設」以前・以後
著者等紹介
市川紘司[イチカワコウジ]
1985年、東京都生まれ。東北大学大学院工学研究科助教。桑沢デザイン研究所非常勤講師。専門はアジアの建築都市史。博士(工学)。東京藝術大学美術学部建築科教育研究助手、明治大学理工学部建築学科助教を経て、現職。2013‐15年、清華大学建築学院に中国政府奨学金留学生(高級進修生)として留学。論文「20世紀初頭における天安門広場の開放と新たな用途に関する研究」で2019年日本建築学会奨励賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
23
著者はアジアの建築都市史を専門とする研究者。”明清時代の宮廷広場としての天安門広場が1949年以降人民広場となる”との中共の革命史観では抜け落ちている民国期に焦点を当て、天安門広場の近代を再構築している。袁世凱と中華民国北京政府、北伐後の国民政府、日本の傀儡政権である中華民国臨時政府、市民や学生といった多様なアクターがこの「政治空間」にどう関わったのか、広場から激動の中国近現代史が垣間見れる。◇昔現地にちょこっと立寄った際、毛沢東の肖像画を目にし、なんとも言えない奇妙な感覚に囚われたのを思い出す。2021/05/24
アメヲトコ
9
国内外それぞれで別な意味で中国を象徴する天安門広場はいかにして形成されたのか。本書で中核的に論じられるのは、天安門広場成立の前史、つまり辛亥革命以降の「近代」におけるありようです。ある面では全く異なる空間でもあり、またある面では民国時代や日本占領時代と通底する要素もあり、さまざまなめぐりあわせのなかで象徴が成立していく過程を非常に面白く読みました。孫文とか蒋介石の肖像が掲げられた時代があったり、「広場」が植樹されて樹林帯の奥に天安門が見えていた時代があったり、知らなかった一面も多々。2021/03/04
鵐窟庵
7
北京の都市史の中における天安門広場についての形成史。中国の各時代の主権の都市空間の中への権力の開現は、広場の空間の設計を通して国家と民衆との間の関係の顕在化でもある。近代中国から新中国へ、現代中国に至るまでの広場空間の変遷は、まさに体制の変遷の現れでもある。興味深い2点、民国時代に天安門広場を市民のための憩いの場として植樹されら緑で鬱蒼としていた時期に対し現代中国の気鋭建築家MADの提案する北京2050でも同様な将来像が提案されていること、1970年大阪万博お祭り広場の発想源天安門広場があったことである。2021/08/04