出版社内容情報
都心の古ぼけた団地で5歳上の姉・七海と暮らすみかげ。未来に希望が持てず「死」に惹かれる彼女の前に団地警備員を名乗る老人が現れ、日常は変わり始めていく。
内容説明
都心の古ぼけた団地で、姉と二人つましく暮らすみかげ。時代の吹きだまりのような場所で、明るい未来が思い描けず「死」に惹かれる彼女の前に団地警備員を名乗る老人が現れ、日常は変わり始めていく―。
著者等紹介
窪美澄[クボミスミ]
1965年、東京生まれ。2009年、「ミクマリ」で女による女のためのR‐18文学賞大賞を受賞。受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位に選ばれる。また同年、同書で山本周五郎賞を受賞。2012年、第二作『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞を受賞。2019年、『トリニティ』で織田作之助賞を受賞。2022年、『夜に星を放つ』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
365
窪 美澄は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 本書は、ネグレクト姉妹老朽化マンモス団地サバイバル物語の感動作でした。但し、表紙と内容が合っていない気がします。 https://www.chikumashobo.co.jp/special/deathbirth/2023/01/03
さてさて
338
主人公のみかげがぜんじろうと共に『団地警備員』として活動する日々の中に確かな成長を見ることになるこの作品。そこには”東京の古びた団地”を舞台にした物語が描かれていました。舞台となる団地のリアルな描写に物語背景が鮮やかに浮かび上がってくるのを感じるこの作品。窪美澄さんらしい細やかな感情表現の中に、みかげが感じ取っていくさまざまな想いを具に感じるこの作品。『死』というものに惹かれていくが故に、そこから見えてくる『生』への思いの強さが逆に浮かび上がってもくる、絶妙な読後感を感じさせてくれる素晴らしい作品でした。2023/05/16
のぶ
234
本作はいつもの窪さんとはずいぶん作風が変わっていた気がした。主人公の棚橋みかげは16歳。姉の七海・21歳と二人だけで暮らしている。みかげが 3歳の時に父親が死去、そして10歳の時に母親は男と家を出てしまった。みかげは学校でイジメに遭って、今は昼にパン工場でバイトしながら夜間高校に通っている。姉の七海は、デリヘル嬢をして2人の生活を支えている。みかげらの住む団地に団地警備員を称するぜんじろうという老人がいた。深刻な家庭環境ながら描写は淡々と進んでいく。最後で人のふれあいの温かさを感じさせられた一冊だった。2023/01/18
いつでも母さん
221
私の好きなヒリヒリした窪美澄じゃないのに、心は反応してしまう。200ページを少しの作品の中に、昭和から令和の現在までのこの国が抱えている問題があった。これが私の住む日本のある一面‥衣食住備わって(時に昼寝もする)私が言うなと顰蹙を買いそうだが。もっと悲惨な子はいるよ。とか、孤独死や高齢者問題は他人事で政治の問題だから。とか、外野の声は救いにも足しにもならない。老朽化した団地で暮らす七海とみかげ姉妹を芯に、死が隣にある『生きること』を強く意識させる作品だった。装画に騙されて窪美澄に泣かされた。2023/01/17
ユースケ
206
★4 団地住みではなかったが、近所にはあまり穏やかでない住まいが密集する地域で幼少期を過ごしたこともあり、読んでいてとてもノスタルジックな気分になった。 あまりに不遇な環境の中、打ちのめされた姉妹が互いに思いやる中盤のやりとりは、深く胸に突き刺さる。切なさとともに、まさに未来に続くような希望もあり、温かい気持ちで読み終えることができた。 宮崎夏次系さんの表紙も郷愁感合って良かった。2023/03/08