出版社内容情報
最古の記録文学は現代人に癒しをもたらす。奔放なエロスと糞尿譚に満ちた破天荒な物語の不思議な清浄感。痛快古典エッセイ。
内容説明
最古の記録文学『古事記』曰く。この国は「まぐはひ」によって生まれた。神人は感情を微塵もつつまず、激しく怒り、泣き叫び、哄笑する。生命の源である「性」がすべての中心にある。現代に疲れた人々が癒しを求めるならば、この「高貴な野獣」のような神と人の、エロスと糞尿譚に満ちた破天荒な物語に触れるとよい。不思議な清浄感、解放感とともに、生きる力が湧いてくる。
目次
まぐはひで生まれた国
禁断の姉弟婚―アマテラスとスサノヲ
裸踊りで引きこもりを癒す―ウズメと猿田彦
女から誘うエロい歌―大国主神と女たち
まぐはひのご利益―イハナガ姫とサクヤ姫
日本古典「最恐」の呪い―海幸彦・山幸彦
大便美女のエクスタシー―神武天皇の皇后ホトタタラの母
大人のカラダになるということ―ホムチワケ
倭建命のエロス―倭建命
まぐはひ男女同盟―神功皇后
「恋の特権階級」に嫉妬した天皇―仁徳天皇
待ちすぎた女―雄略天皇と赤猪子
著者等紹介
大塚ひかり[オオツカヒカリ]
エッセイスト。1961年、神奈川県生まれ、早稲田大学第一文学部日本史学専攻卒業。出版社勤務を経て、1988年、失恋体験を綴った『いつの日か別の日か―みつばちの孤独』(主婦の友社)でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゃれら
15
マハーバーラタに本と歌舞伎で触れて、日本の神話も読んでみたいなと思っていたら、河出文庫で「古事記」が出て、これだと思っていたのに、手に取ったのはこちら。果たしてそれでよかったのか。日本史の授業で古事記のことは習ったが、天皇につながる神について語った神話であるということ以外は殆ど知らされなかったですよね。で、こんなにまぐはひのことが書かれてりゃそうなるよ、という話が、女性の生理的感覚と共にわかりやすく書かれている。日本の神話、すごいわ。2024/01/13
散歩いぬ
8
どこから読んでも面白い。現代的な視点で古代を見ている、のとはちょっと違うと思う。大塚さんの女のアンテナで解読した古事記なんではないか。古事記の中で、とりわけ女性が「おや?」と思うところをピックアップして連想を広げている(とは言え参考資料は結構な数です)。「まぐはひ」を通して見る古代は性愛を尊重していて、確か小谷野敦さんの「退屈論」でも〈恋愛は退屈しのぎであり、しかしそれは文字文化や娯楽のない時代には生活において重要な部分を占めていた〉的なことが書かれてあった。昔から人間はパンのみに生きるに非ずなのだな。2012/11/03
Akiko Shimizu
5
今年は古事記編纂1300年。入門書としては読みやすく、そしていい意味で偏っていて、知人の読書家の紹介に従ってよかった!と思える本でした。著者の大塚ひかりさんが自分の体験に引き付けて語ってくれて、俗的な話と伝承神話との間をすいすいと気持ちよく行ったり来たりできます。何度か引用されている、同じ著者による「ブス論」も読んでみたくなりました。2012/05/25
パワー3
3
古事記の解説本。まぐはひに注目するとこうなる。人間って動物の一種なんだなぁ。と改めて思った。2012/09/30
わす
2
ウンコしてる最中に性器を突かれたホトタタライススキヒメに別名があるのは、女性器の呼称であるホトが名に入ることを嫌っての改名だったと読んでふと紅萬子を思い出した。関西圏にマンコの語が浸透していなかった時期にデビューした萬子姐さんとは違って、タタラヒメの場合「ホト」は名付けられた時点ですでに女性器を意味する言葉だったわけで、神話が生まれた時代は名に性器の呼称が入っててもおかしくなかったということか。2023/12/06