出版社内容情報
学校の中で、自分の役割を見つける事に最大の喜びを感じるケンタくん。小学校入学から大学受験まで、教育と幸福の本質を深く考えさせられる自伝的小説。
内容説明
ケンタくんは、自分の頭で考えて根本がわからないと前へ進めない。だから初めは学校になじめず、クラスでも独りぼっち。そんな彼もあるきっかけで友達ができて「体の中がずっと幸福で、生きてるだけで忙しい」毎日を経験し、自信をつけていく。でも高二になり、クラスが受験一色に染まると、「ひとりでもいいから高校生をやろう」と思うケンタくんは再び孤立してしまい―。学校の勉強の本当の意味は?いちばん大切なことって何?子供の気持ちで感じ、傷つき、最後にはやさしい気持ちいっぱいで涙する自伝的小説三部作・全収載。
著者等紹介
橋本治[ハシモトオサム]
1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルを越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)他多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ムーミン2号
11
初期のちくまプリマー新書に3分冊で収録されていた作品。ケンタくんという少年が小学校にあがる頃から高校を卒業するあたりまでが描かれる。といっても、そこは彼のこころの成長というものが描かれ、そして最後に(彼が社会人になった後に感じた)勉強するということはどういうことなのか、が示されているものだ。自分のこども時代を思い出しながら、ページを繰る手ももどかしく読み終えた。友達ができなかったケンタくんがいくつかのきっかけから多くの友達ができ、それからはっちゃけていく様子も楽しいが、こども時代は忘れたくないものだ。2023/08/12
Bartleby
11
橋本治さんの実際の体験がもとになった、ケンタくんの小学生から高校受験までの物語。前半のケンタくんの抱えるわからなさの描写は、自分も小さい頃こんなとまどいを感じていたことを思い出した。だからケンタくんが遊びから学んでいく姿は読んでいて胸を打たれた。学校やそこでの勉強でなくてもいい。むしろ遊びの場こそ、自分で考えて試行錯誤することを学ぶ大切な環境なのだと感じました。2012/07/24
はちくま
8
安定の橋本さん。今立ち止まっている子供が読んだら元気が出ると思う。ただ、これ、息子が大人になって関係性を改善できないまま、自分の書いた本だと読まされたら、お母さんキツいだろうなあ。このお母さんは、息子が可愛くなかったわけじゃなくて、多分真面目な努力家で、でも日常生活に疲れて余裕がなかったんだろうなあと思うから。2013/11/26
チンズ
7
久しぶりに一気に読んでしまった本です。どうしてなんだろう?なんでなんだろう?と疑問を抱いても、その疑問を大人伝えることもできなくて、また言ったとしても的く確な答えを返してくれる大人もいない。結局自分で考えて考えて・・・・を繰り返しているとある時ふっとわかったり、気がついたりすることがある。 読みながら自分の子供時代を思い出していました。 最終的な答えは自分で導きださなければ本当の答えにはなりえない。 これは是非多くの若者に読んでもらいたいと思う。 ラストの話もとても感動的で読後とてもさわやかな気分になった2011/12/29
くろいの
7
子供の心理とそして親の言動と心理も、リアルすぎる。すごい。ラストのクライマックスに少し泣いた。私も、小学校という狭い狭い世界がすべてで、毎日が精一杯でつらくてしょうがなかった頃の自分に、「大丈夫だから、そのまま歩いておいで」って言いたい。言ってあげたい。ありがとう、ありがとう橋本サン。 2011/07/02