ちくま学芸文庫<br> ピカソ 剽窃の論理

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ちくま学芸文庫
ピカソ 剽窃の論理

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  • サイズ 文庫判/ページ数 264,/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480081780
  • NDC分類 723.36
  • Cコード C0171

内容説明

20世紀最大の画家パブロ・ピカソ。レンブラント、エル・グレコ、ベラスケス、マネなど、過去の多くの作品に触発されたピカソは、それらを独自に消化し、自らの作品としてまったく新たに開花させた。絵画のデーモンにとり憑かれた天才は美術史といかなる対話を交わしたのだろうか?稀代の画家・ピカソの創造性・人間性の本質を浮き彫りにする。

目次

第1章 孤独の画家
第2章 モンマルトル
第3章 宮廷の侍女たち
第4章 ゲルマンの誘惑
第5章 ラテン精神の伝統
第6章 戦争と平和
第7章 草上の昼餐
第8章 サビニの女たちの掠奪
第9章 画家とモデル
終章 ピカソ芸術の本質

著者等紹介

高階秀爾[タカシナシュウジ]
1932年東京生まれ。東京大学教養学部卒業、同大学院およびパリ大学で近代美術史を専攻。国立西洋美術館館長、東京大学名誉教授。ルネッサンス以降、現代美術にいたるまで、広い視野に基づく知性と独自の感性を駆使した明晰な研究と評論で知られる。『ルネッサンスの光と闇』で芸術選奨文部大臣賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

井月 奎(いづき けい)

28
芸術は美をいれる箱です。美が傷つかないように慈しまなければならず、空気の揺れのように現れたり消えたりする美をつかまえるには素早くなければいけません。そのためには先人の形式や方法を使うのが効率的です。自らが不得手とするところもそれで補うことができます。ただし、それを自分の血肉としなければなりません。単純な模倣は恥ずべき盗作です。実は剽窃の方こそ創意工夫が必要になる作業なのです。そしてそれが上手くおこなえた場合、自らの味わいに先人の風味を加えることができて、美を愛でるための絶佳な入れ物が出来上がるのです。2016/02/21

風に吹かれて

18
ピカソは先人の絵画から構図を借用し、感嘆させられる造形を創り出していった。 例えば、ラファエロによる「パリスの審判」を下敷きにしたマネの「草上の昼餐」の構図を剽窃していくつもの「草上の昼餐」を制作。後の作品ほど抽象度が増し画面の変化が面白い。 また、ゴヤの「五月三日の処刑」の構図を用いて朝鮮戦争勃発のときに描かれた「朝鮮の虐殺」は、特定の戦争に触発されたものであったとしても普遍的な人間の恐ろしさを描いたものとして「ゲルニカ」と肩をならべるものだと思う。 →2023/03/29

ラウリスタ~

10
高階氏が20代の頃に書いた記念碑的ピカソ論のようだ。ピカソは独創的な画家という先入観が強いが、実はキュビスム期(1910年前後)の後は、ずっと過去の有名な作品(ベラスケス、ドラクロワ、マネ…)を「剽窃」し続けた。ここでいう剽窃とはもちろんカッコ入りの意味で、構成能力を欠いていたピカソが過去の名作から構図を借り、その上で登場人物の形態を次から次へと変容させていく中で、独自な絵画を作り出していくこと(そして色彩にはピカソは関心が薄く、作品自体より複製から影響を受けることが多い)。キュビスム期の逆説的重要性。2023/07/23

ヒロセ

4
私も美術館でピカソの模倣作品(?)を見る度に「ピカソは何故、美術史上‘名作’と呼ばれる作品をマネして描くんだろう??」という疑問が湧いていたのですが、その疑問をこの本は見事に解消してくれました。高階先生はあえて「剽窃」という一般的にはマイナスにとられがちな言葉を用いていますが、同時に「変奏」という言葉もでてくるように、ピカソの評価を決して貶めてはおらず、むしろピカソ芸術の特性を鮮やかに描き出している点(剽窃行為が全く見られないキュビスム時代の特異性の指摘)で個人的にはとてもおもしろかったです。2012/11/26

Metonymo

1
「奔放自在なその創造力,溢れるようなその独創性を否定するものはまずあるまい。それでいて、またピカソほど密接に歴史と結びついている芸術家も珍しいのである。」第9章「画家とモデル」での90歳になろうとするピカソが描いたエッチングと芸術家の創造力についての高階氏の文章が感動的で素晴らしくて、直接読んでもらうしかないが、当時27歳の高階青年が、史上最も有名な画家についての本を書くという行為と決意、そしてその結果として本書のような批評・解説としての傑作を書いたことにも感動した。2013/04/08

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