出版社内容情報
ひとはなぜ「認められないかもしれない」という不安を募らせるのか。承認欲求を認め、そこから自由に生きる心のあり方と、社会における相互ケアの可能性を考える。
内容説明
自由に生きられるはずなのに、かえって自由に行動できない現代社会。そこには「自由に行動すれば認められない」という承認の不安がある。誰もが自分を押し殺し、周囲に同調し続けているのはなぜなのか。どうすれば本当の自由が得られるのだろうか。承認不安の意味を哲学的に考察し、この不安を解消するための心のケアの原理を提示。さらにこの原理を、子育て、保育、教育、看護、介護などの多様な局面にまで広げ、自由と承認を得られる相互ケアによる共生社会を考える。
目次
1 「認められたい」欲望の正体(なぜ「認められたい」のか?―承認欲望の現象学;「認められたい」欲望の形成―幼児から高齢者まで)
2 自由な心を蝕む「認められたい」不安(承認不安が生む心の病;承認不安を緩和し、心の病を癒す方法)
3 「認められたい」を認め合う社会(「認められたい」社会;自由に生きるための条件とケアの原理)
相互ケア社会の未来
著者等紹介
山竹伸二[ヤマタケシンジ]
1965年生まれ。評論家。学術系出版社の編集者を経て、哲学・心理学の分野で批評活動を展開している。大阪経済法科大学客員研究員、大正大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スプリント
19
SNSの進歩と普及で人類史上かつてないほど承認欲求が高まっているといえる。裏返せば承認不安が生み出すメンタル不調や突飛な行動が増加しているともいえる。2022/09/04
テツ
18
自身のことを他人を気にせず独りで満ち足りて存在していられるタイプの人間だと感じているけれど、それは幸運なことにプライベートでも仕事の場でも殊更に自分からアピールせずとも存在を承認してくれる他者(たち)に恵まれているからなのかもしれない。自らの価値観や感性と必ずしも一致しない他者の行動や行為を常に承認することは難しいけれど、あなたの存在そのものについての承認はきちんと言葉と直接的な態度で示すべきだよな。黙っていてもきもちは伝わるなんていう怠惰さが人を不安にさせる。あなたの存在はしっかり認めている。大丈夫だ。2022/12/02
まゆまゆ
18
承認不安が蔓延し、子どもから大人までいたるところで空虚な承認ゲームが行われている現代社会。近代化とともに多様な価値観が叫ばれ、社会共通の普遍的価値観が存在せず行動基準がない中で自由が叫ばれているため、認められないという自由と承認の葛藤を抱えてしまう。お互いの価値観の多様性を認めるだけで干渉しない関係になると、身近な人や同じ価値観の集団以外に対して無関心になる。これが社会の分断であり、回避するためには他人をケアし自分もケアを受ける相互ケアが必要である、と。2021/03/24
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17
自由と承認との葛藤、あるいはマイルールの歪み。これらを乗り越えるためには、普遍的な視点からの自己承認が必要となる。普遍的、とは絶対的に正しいという意味ではない。自分のいる組織や集団の掟に縛られることなく、広い視野で考えられるということだ。でも、そのためには、幼少期の親和的承認や、多様な価値観を持った人々との交流が求められるわけで...結局「環境次第」という印象を持った。後半は承認不安の当事者というより、そのケアを担う側向け。2021/03/01
まちゃ
11
承認欲求、自己肯定感の本はいくつか読んできたがこの本が1番よかった。承認欲求について深堀してあり、興味深い。承認には、存在の承認、行為の承認があり、生きていく上で大切なのはあるがままの自分が認められているという存在の承認。近年、考え方や生き方が自由になった分、どう生きていきたいかわからない人が増えている。それは、自由にやりたいことをやり、生きていきたいという反面、多くの人から認められたいという、自由と承認の葛藤から来るもの。色々な価値観を学び、自分はどう生きていきたいか、自分なりの答えを見つけることが大切2021/11/05