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ちくま新書
世界を肯定する哲学

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  • サイズ 新書判/ページ数 233p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784480058836
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0210

内容説明

思考することは、ひたすら“問いかけ”をつづけることである。思考のプロセスに演算不能領域を組み入れ、思考することの限界を実感することで、逆説的に“世界”があることのリアリティが生まれる。風景や動物を文学的な比喩として作品に組み入れず、ただ即物的に描写する特異な作風の小説家によって、問いつづけられた「存在とは何か」。宇宙の外、サッカー・ロボット、カフカの視野、夢の中の生、十四歳の夏の朝の経験…等の具体的な事象から、小説家独自の思考プロセスを経て、存在することの核心に迫ってゆく。そして最終的に、意識や記憶が、“私”の側でなく“世界”の側にあることが描き出される、世界のための、世界の肯定のプログラム。

目次

そもそも人間はこの宇宙に存在しなかったのではないか
世界のモデルと視覚(俯瞰と自己像;視覚イメージを持たない思考)
「記憶の充足性」は思考によって浸食される
「私」はすべて言語というシステムに回収されうるか
「リアリティ」とそれに先立つもの
私が存在することの自明性について
いまの言語(思考法)とそうでない言語(思考法)
夢という、リアリティの源泉または“寸断された世界”の生
記憶は“私”のアイデンティティを保証するか
“精神”が書物の産物だとしたらインターネットの中で“精神”は…
生きる歓び

著者等紹介

保坂和志[ホサカカズシ]
1956年生まれ。早稲田大学卒業後、西武百貨店のカルチャーセンターでおもに哲学・思想・心身論の講座やワークショップを企画。90年『プレーンソング』(中公文庫)でデビュー。『草の上の朝食』(同)で野間文芸新人賞、『この人の閾』(新潮文庫)で芥川賞、『季節の記憶』(中公文庫)で平林たい子賞、谷崎潤一郎賞を受賞。その他の著書に『猫に時間の流れる』(新潮文庫)、『残響』(文芸春秋)、『もうひとつの季節』(朝日新聞社)、『〈私〉という演算』(新書館)、『生きる歓び』(新潮社)、『羽生-21世紀の将棋』(朝日出版社)、『アウトブリード』(同)など
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

翔亀

43
この世界は悪ではなく善だから肯定する、という意味の肯定ではなく、私が死んだら世界はどうなるのかという問いを根源的に問うた上で、私が生まれる前から、そして死んだ後も世界は存在するのだ、という意味での<肯定>の書。保坂さんが<小説>のなかでつぶやいてきた哲学的存在論に、今回は、しっかりと結論を出す。その結果が「世界の肯定」。これまで怠ってきたそれを実感するために小説を書くのだ、と力強く宣言する。願わくばそこから、「私」の肯定や、「生」の肯定や、さらに「死」の肯定が、生まれるといいな、と心底思う。 2014/11/08

踊る猫

29
独自の死生観が平たく綴られる。私は世界の中に生まれ落ちて、私抜きでも世界はあり続けたしこれからもあり続けるという指摘は『カンバセイション・ピース』でも合い通じるものがあると見た。保坂和志作品はしかし、小説でこそ精彩を放つのではないか。エッセイだとどうしても思想的な面がむき出しになってしまい旨味を欠くと思う。つまり、小説と比べるとという但し書きをつけた上で敢えて言えば、さほど面白くない。小説を読んだ人物がその謎解きとして読むには面白いのではないか。くだらない、とは言わないが「小説家」なのだなと改めて思われた2018/10/22

抹茶モナカ

24
言語の前に肉体が、肉体の前に世界があって、自分が存在する以前から世界はあり、自分が死んだ以後も世界は存在する。保坂和志さんの思索を追えるスリリングな1冊。世界が存在する事を肯定する思考の過程を辿れる本。ポジティブに世界を認識できるようになる本ではなかったので、前向きになりたかったので、アテが外れた形になったけど、読んでいたら「考える」事の面白さが伝わって来て、良かった。2016/10/19

ヒダン

8
「存在」や「死(=ない)」ということを考えるときに手がかりとなるような一冊。各章の導入がうまくて、難しい話にもすっと入っていける。私という意識(=言語)に微差で先行する私の肉体に微差で先行する世界という構造を認識し、言葉を超えて、肉体も超えたところにある世界を実感することが「『ある』をあらしめている」とか「存在」とか「死」の自明性を考える上で必要なのだ。議論の中心でないところも示唆に富んでいて興味深い話が多かった。ハイデガーの本を読んでからまた再読したい。2014/01/16

しんしん

6
思考と言語とイメージと記憶とリアリティと自分と世界との同一性と相違性を思索する。 脳は今までと同じことは流して処理してしまうため、違和感こそがリアリティを立ち上げるということはなるほどと思った。2016/06/05

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