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内容説明
少年時代の著者はスジガネ入りの腕白坊主。山野を駆けめぐり、川や田んぼで泥だらけ。遊びの中で、四季のめぐりの美しさやいのちの不思議を心に刻む。小さな探険心に満ちた思い出の数々や、動物学者になって出会った生きものたちの素顔など、身近な自然とのふれあいをあたたかなまなざしと軽妙な語り口でつづった博物誌。
目次
腕白坊主のフィールドノート(漆の名刀;“テンネン”の秘密;松滑り;コンマが来た;曙号の死;すももとゴリラ;変身したミンミンゼミ;川原の惨劇;葱・蛙作戦;バビブベボのバビボウ;白装束の狩人;ピットフォール)
動物学者の事件簿(金魚を狩る蛇;ムカデに助けられたアホーな父親の話;猿になった犬;子猫を育てる猿;麻酔された下手人;連続殺鳥事件;妖怪の赤ちゃんを飼った話;森の幻視鏡;メルヘンランドでの再会)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
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漆の木に触った後の痒み地獄。雀の子を捕る時の、木から落ちて死ぬ懼れと、小さな命を狙う痛み。はたまた男の意地と狩人の残酷さ。こんなドキドキする場面が私の子供時代にあったろうか。都会っ子の私は残念ながらこんな体験を知らない。が、ここにある遊びは平時のものとは少し違う。彼ら軍国少年は、遊びの中で恥を知り、死にたいとまで願う。甘美さの中に痛みがあるのだ。応召した兄の安否も知れず、ウグイの群れにB29編隊の幻を見た時の痛みはどれほどか。そうした子供時代から、父であり動物学者である日常へと、大きな振幅を見せる回想録。2020/09/17