内容説明
えっ、これが古典。そう、百人一首の歌人たちも、かつてこの地上で短い年月を暮らし、息づき、愛し、食べていた。タブーの恋に身を焦がす美男。浮気なやりとりをかわす熟女、とぼけた笑いの法師、非行天皇とツッパリ母后etc.。恋のかけひきを楽しみ、親子の確執、権謀渦巻く政治の中をくぐりぬける生身の人間たち。華やかにして切実な人間関係から貴族文化六百年の流れがみえてくる。時代を超えた妖艶な美女の絵が彩る。
目次
プロローグ 紅旗征戎は吾が事にあらず―戦乱の世の雅び百人一首
第1章 渡る日の照る月の―古代の大王と宮廷歌人
第2章 百夜通ひのあら苦し―美男と美女の六歌仙
第3章 鶯のこほれる涙―奪われていく王権
第4章 人の心かはりにければ―求愛も脅迫も歌にのせ
第5章 やまとうたのとき来たる―花鳥風月曲水の宴
第6章 花を折り給ひし君たち―はやり病と怨霊と
第7章 ただ過ぎに過ぎゆくもの―清少納言と陽気な後宮サロン
第8章 わが世とぞ思ふ望月の―源氏物語を生んだ後宮
第9章 野べのけしきよ面がはりすな―スキものの歌論難
第10章 今生はしそんじつ―保元の乱の渦の中で
第11章 花の下にて春死なむ―乱世のひとり旅、西行法師
第12章 をよばぬ高きすがたをねがひて―王朝文化終焉の光芒