ちくま文庫<br> 女たちの遠い夏

  • ポイントキャンペーン

ちくま文庫
女たちの遠い夏

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 275p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480028730
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

イギリスに住み、娘の自殺という事態に遭遇した悦子は、自分が生きてきた道を回想する。裏切りの記憶、子殺しの幻影、淡く光った山並みの残像―戦後の長崎を舞台に、戦争と戦後の混乱に傷ついた人々の苦しみを、端正流麗な文体で描きあげる。謎めいた構成の背後から、戦後日本の一つの透し図が現われ出る…。長崎生まれ英国育ちでブッカー賞受賞の日本人によるイギリス文壇へのデビュー作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

307
これはひどい。てっきり未読本だと思って読み始めたら『遠い山なみの光』と同じものだった。原題は"A pale view of hills"なのに本書の邦訳題は『女たちの遠い夏』。あるいは、こちらの出版が先なのかも知れないが、それにしても…。皆様も気をつけてください。結果的にはカズオ・イシグロの小説は知らない間に完読していたみたいだ。2017/10/18

HIRO1970

106
⭐️⭐️⭐️⭐️図書館本。イシグロさんは4冊目。本著は初の長編小説だったそうで、原著は82年の作品との事です。作者のルーツである長崎と育った地のイギリスを繋ぐ物語でありました。多くの作品のテーマである先の大戦後のパラダイムシフトで檜舞台から去らざるえなかった者達がやはり現れ、過去と現在とがシンクロしながら進む物語は4冊目にしてようやくイシグロさんの作品の魅力が掴めた感じがしました。最近は解りやすい本ばかり読んでいたので説明が少ない突き放した感じが新鮮な感じで隠喩のようなジワッとした味わいが愉しめました。2016/07/06

かおりんご

25
小説。初カズオ・イシグロ作品です。長崎の戦後復興とそれから20年ほどたったイギリスが、行ったり来たりで描かれています。正直、不思議な話でした。なぜ景子が自殺したのか、佐知子はその後フランクとどうなったのか、悦子がイギリスに渡った動機はなんだったのか、解明されないままなので、もやっとします。2018/02/11

雪月花

22
カズオ・イシグロ氏の処女作ということで期待して読んだのだが、『日の名残り』で受けたような感動はなかった。原爆のあとの長崎で人々がどうやって立ち直ろうとしたか、どんな希望を抱いていたかをイシグロ氏は描きたかったそうだが、そこまで描かれているようには思えず、どの登場人物を取っても好きになれなかった。特に佐知子と万里子の母娘が気味の悪い後味を残した。語り役の悦子は多分、長崎からイギリスに移住したイシグロ氏自身と重なる部分があるのだろうと思うが、全てが曖昧模糊でそれがイシグロ氏の魅力としても入り込めなかった。2020/10/14

akubi

6
フィルターを通して見るニッポンの夕暮れ時は、神秘的で幻惑的。 まるで、遠くで生まれたての魂がふわふわと漂っているような。 小津安ニ郎の描く柔らかな家族や友人との会話がぽつりぽつりと。非現実的な現実味を帯びて置き去りにされる。 そこにはにおいはなく、夏なのになぜだか少し、寒気がした。 過去からの亡霊が、今も彼女の心をなぜてゆく。 ちぐはぐな会話。真っ黒な蜘蛛。引きずられた縄。 恐ろしい地獄の記憶が惑わせる。 恐ろしくらいに美しくとてつもなく気味の悪い情景に、心が掻き立てられた。とてもすきな世界。 2019/07/09

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/490107
  • ご注意事項