内容説明
生物は、遺伝子に偶然生じた突然変異によって進化する。だが、突然変異の多くは有害だ。偶然にまかせていては、進化どころか絶滅してしまうのではないか?この矛盾を解く鍵は、DNAが自己複製の際に見せる奇妙な不均衡にあった―。カンブリア爆発の謎から進化加速の可能性まで、生物進化の見方を劇的に覆す画期的な新理論。
目次
序 進化論との出会い
第1部 進化の常識を疑う(進化とは何か;進化と時間;進化、解けない謎)
第2部 不均衡進化論(奇妙にして巧妙なしくみ;不均衡モデルと均衡モデル;進化加速を実験する)
第3部 進化の意味と可能性(残された課題と不均衡進化論の未来;不均衡進化論からわかること)
第4部 生命と進化(生命の美学)
著者等紹介
古澤滿[フルサワミツル]
1932年生まれ。大阪市立大学理学部助教授、第一製薬分子生物研究室長、新技術事業団「古澤発生遺伝子プロジェクト」総括責任者などを経て、ネオ・モルガン研究所設立。発生生物学者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メルセ・ひすい
3
14-25 赤28 DNAはまったく異なる2つの方向性を同時に満たす精妙な複製機構を備えている。二重螺旋構造を構成する2つの分子鎖は複製のされ方が違う。保守性と革新性で発展を産むのだ!親と同じ情報を子にも受け継がせる機能をアナーキーな多様性の創出。生物はいかにして爆発的進化を遂げ、絶滅の危機を乗り越えてきたのか。カンブリア爆発の謎から進化加速の可能性まで、従来の生物進化の見方を劇的に覆し、核心に迫る画期的な新理論。★メルセの最新お薦め関連図書⇒『ゲノムと聖書』・『ザ・リンク』・『大腸菌』アップ済みです。2010/12/07
void
2
【★★★☆☆】「元本保証された多様性の創出」というキーワードで、進化を偶然だとするドグマを必然の方向へと修正し、そのままの遺伝子を残しつつ(元本保証、保守)環境の変化具合などに応じて進化の速度を調節している(多様性の創出、革新)という、より合理的な進化像を提示するスリリングな書。実験手法の意義とか方法など専門的な部分は知識・モチベ不足でわからなかったが、結論だけを追うのは難しくない。進化は合理的なシステムに基づいているというこの主張は非常に魅力的だ。2012/08/23
YUJIRO
1
突然変異はランダムに入るのでなく、DNAの複製方向によって変異が入る確率が異なるモデルを提唱。これにより、種の安定性及び、多様性が保証され、自然淘汰に強くなる。このモデルの考え方自体は、賛成である。しかし、著者が、このモデルをもって、生物側に進化の駆動力があり、「利己的な遺伝子」の考え方を否定しているのは「利己的な遺伝子」を誤読していると思う。不均衡進化論も自己複製子の一種であるから、「利己的な遺伝子」での考え方での自然淘汰の結果と矛盾しない。2020/04/30
ミッキー
1
二重らせんのほぐれ方によって、DNAの複製のされ方が変わるというのを初めて知った。科学について、定期的に読まなければと想いを新たにしました。それにしても、アイデアを生むのは掛け合わせで、優秀な人は他分野も詳しいというのがこんなところにも出ていて驚く。それにしても、専門を深めるのはどんどん難しくなっているのに、複数を学ばなければ解決出来ないというパラドックス、脳の進化でしか、解決出来ないのではないか。いろんな発想が浮かんで来ました。2015/07/05
浪人アジ
1
岡崎フラグメントの存在意義を疑問に思っていた時に出会った一冊。 スッキリした。2014/09/17