内容説明
誰もが一読しただけで中身に引き込まれるのは、言語学からの精神分析理解とフロイトの文学性とを結びつける著者の博学と学識のせいだけではない。フロイトの著作と同様に、本書も実に多義的存在であり、それが読む者に快楽をもたらすからだ。『トーテムとタブー』、『快感原則の彼岸』、『精神分析入門』、『不気味なもの』、『夢判断』といった作品が舞台となり、フロイトが主人公の物語が展開するところでは、まるで「戯曲」であり、同時にまた、シャーロック・ホームズがフロイトの謎を読み解く「推理小説」のようでもあり、フロイディア世界の「旅行案内書」でもある。そして、もちろん、“フロイトの著作を読むことが精神分析体験そのものとなるのだ”と主張する、精神の科学のための第一級の専門書となっている。
目次
1 フロイトが書いたものの広がり―概観
2 実例としての二つのテクスト
3 観客に十分に訴えかけること
4 確実さの割合
5 比喩的言語の源泉
6 文体の働き
7 理論とその人
8 後記―精神分析的にフロイトを読むこと