内容説明
猫の世話をするだけの簡単なお仕事―喫茶虹猫。こんな求人募集を見て、獣医大学一年生の僕はある古ぼけた喫茶店を訪ねた。そこで待っていたのは、「猫バカ」で引きこもりの美しきオーナーと里親募集中の捨て猫たち。任された仕事は、厄介な婆さんが住む猫屋敷の掃除と店の猫に生涯愛してくれる飼い主を探してやることだったが、次々と面倒な事情を抱えた客人が現れて…。猫と暮らす美しい女の願いは叶うのか。寂しがり屋の人間たちと愛くるしい猫の日々を綴った長編小説。
著者等紹介
坂井希久子[サカイキクコ]
1977年、和歌山県生まれ。同志社女子大学学芸学部日本語日本文学科卒。2008年、「虫のいどころ」で第88回オール読物新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
222
猫好きの方のためにあるとにかく猫一色といっても過言ではない作品で、坂井さんの相変わらず多彩な作風に楽しませてもらいました。特に希望のない獣医予備軍の学生「玉置」君と美人ながら一風変わった雰囲気の持ち主である喫茶店店主「サヨリ」さん、その2人を中心に猫にまつわるあらゆる出来事を楽しくも、時には生命をテーマにしたシリアスな内容で書き綴っています。ただ猫がカワイイだけでは、素直に読み進めるコトはできなく、そこには中絶や不妊など、人間をテーマに差し替えてもと思わせる真摯なテーマが見え隠れしてるように感じました。2016/01/09
takaC
160
なかなか面白かったけどあと5年、いや、せめて3年くらい進んで欲しかったかも。しかしなんとなく途中から、玉置くん=五代くん、サヨリさん=響子さん、相田先生=三鷹さん、ヒカル=惣一郎さん(犬)みたいな感覚で読んでた。でも、桜田美代子≠こずえちゃん、だな。2015/10/07
mmts(マミタス)
156
どの猫も個性的で可愛らしいですが、お気に入りは豚丼とサビ子です。そして、人間も個性的です。サヨリさんも苦労人なんですね。どんな方法ならば、猫が本当に幸せなのか、真剣に考えさせられました。事前に避妊手術することは大事ですが、それを人間に置き換えれば、とんでもない虐待ですし。お爺ちゃん、やっぱり老い先を考えれば、子猫は無理なんでしょうか。何か猫を一番に救えるんでしょうか。サヨリさんにはアイ失踪事件の火事場の馬鹿力ではなく、いつか前向きに日向を歩けますように。カケルとヒカルには唯一無二の親友になって欲しいな。2015/07/23
優希
121
猫のいる喫茶店を通じて考えさせられることが色々ありました。里親募集になった猫たちの集まる喫茶店。そこでの日常を通じて、今時のペット事情についてが伺えました。それぞれ言い分はあるでしょうが、動物を飼う以上は責任を負わねばならないと思います。共に歩むために人間が作ったルール。それが壊れたとき、動物との時間は終わるのかもしれません。屈折した登場人物や猫たちが何故か愛おしく感じられます。2017/04/21
優花 🍯モグモグ
116
タイトルと装丁に惹かれただけで図書館から借りて読みましたが、思っていた以上に良かったです。なかなか個性的の強い人たちばかり。その人、その人、様々な事情を抱えながら生きている。それは人間だけでなく猫たちも同じ。読んでいくと色々と考えさせられる部分もあり、最後には心がほぐされていく感じがしました。強く生きなくてもいい。上手く生きなくてもいい。じわじわと優しさが伝わってくる作品で好きでした。2016/05/07