• ポイントキャンペーン

はじめてだらけの夏休み―大人になりたいぼくと、子どもでいたいお父さん

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 211p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784396633998
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

「…ママは疲れがたまりすぎて、病気になってしまったようなのです。なにごとも頑張りすぎてはいけないと、お医者さんに言われました。死にたくなくなる薬を、ちゃんと飲まなければなりません。」「夏休みがはじまる日、ママは新潟のじいじとばあばの家に、行ってきます。あなたの顔を見ると、絶対にいけなくなっちゃうから、あなたが学校にいるあいだにママは行きます。ごめんね。ごめんなさい。」

突然、お母さんは消えた。ぼくはお母さんを守れなかった。というよりも、壊したのは、このぼくだ。疲れはじめていたお母さんと毎日一緒にいたぼくはうまくいかなくなった。
お父さんは仕事ばかりしていて、ほとんど家に帰らない。映画やテレビドラマの撮影現場へ行き、特殊なマイクで音を録る、録音技師という仕事をしている。

夏休みがはじまる日に、朝起きたら煙草と酒と脂のにおい――五カ月ぶりに会うお父さんが流しの下に落ちていた。ぼくはお父さんをいまひとつ好きになれない。最近は、会ったとたんにわけもなく嫌いになる。「ママはもう帰ってこないよ」と、お父さんは言った。

「この夏は、俺にとっても夏休みなんだ」ふいに、お父さんがつぶやいた。「家のことがちゃんとするまで、仕事はずっと休むつもりだから……」

初めてきちんとお互い向き合った。数々のくだらない遊び、お父さんの仕事に同行したり、
そして、忘れられない、ぼくとお父さんの、ふたりきりの夏休みが始まった。

内容説明

はじめて、きちんと向き合ったぼくとお父さん。ふたりきりの夏休みが、はじまる。病気になったお母さんは突然、新潟の実家に帰ってしまった。いつも仕事ばかりのお父さんはめったにうちに帰ってこないので、ぼくはひとりになった。誰の指図も、もう受けない、とぼくがやけくそになったその矢先―。夏休みがはじまる日に、五カ月ぶりにお父さんが帰ってきた。「この夏は、俺にとっても夏休みなんだ。家のことがちゃんとするまで、仕事はずっと休むつもりだから…」。突然お母さんが消えた九歳の夏、ぼくははじめて素顔のお父さんを知った。映像・小説界期待の気鋭が、イラストとのコラボレーションで描く親子の絆。

著者等紹介

唯野未歩子[タダノミアコ]
1973年東京都生まれ。武蔵野美術短期大学でグラフィック・デザインを学び、多摩美術大学で映画制作を学ぶ。多摩美大在学中に映画「フレンチドレッシング」(斎藤久志監督)で女優デビューを飾り、毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞を受賞。「大いなる幻影」(黒沢清監督)、「さゞなみ」(長尾直樹監督)、「いたいふたり」(斎藤久志監督)、「血と骨」(崔洋一監督)など数々の映画に出演後、2005年に映画『三年身篭る』で監督・脚本を担当し、高崎映画祭若手監督グランプリを受賞、同時に同名の小説で作家としてデビュー

渡邉良重[ワタナベヨシエ]
1961年山口県生。山口大学卒。(株)DRAFTに25年間勤務。2012年、アートディレクションの仕事や作品制作も一部共同で手掛ける植原亮輔氏と共に(株)キギを設立。主な仕事としてはD‐BROSのプロダクトデザイン、une nana cool、PASS the BATONのアートディレクションなど。『BROOCH』は、世界の主要コンペティションにおいて高い評価を得ている(ONE SHOW DESIGN・GOLD NY ADC・GOLD講談社BOOKデザイン賞)。その他東京ADC賞、東京ADC会員賞、東京TDC賞、BritishD&AD・GOLDなど受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

kana

28
表紙から、こういう物語だったらなぁと願ったその期待を裏切らない温かく愛おしい物語。9歳のぼく、葉太、うつ病のお母さん、録音技師で殆ど家にいないお父さん。夏休み初日、遂にお母さんが実家に帰ってしまい、休みをとったお父さんと2人で暮らすことに。ぎこちないお父さんとの夏の日々に多感な葉太の揺れ動く心、そして崩壊寸前の家族の結末は・・・?みんなお互いのことを好きなのに、なぜ離れ離れになるんだろう。葉太の純粋な疑問が胸につきささります。少年目線だからこその、瑞々しい描写の数々に幾たびも心を揺さぶられました。大好き!2012/10/26

ふじ

20
ジャケ借り。子どもじみた親と、大人にならざる得ない男の子。子どもじみているが故にすれ違い、離婚の危機に立たされている。母が居なくなる所から話は始まる。作中、お父さんばかりがダメ人間扱いを受けているけれど、お母さんもたいがいだと思う。お互いの弱さと、それすらも根っから嫌うことができない息子の描写がリアル。誰しも、今ある環境の中で最善を尽くして生きるしかない。2018/07/27

あー

17
お父さんとお母さんと子どもの3人。それぞれの本当の気持ち。夏休みが終わってぶつけ合えたら良いね。ところで夏休みの宿題は無事終わったのだろうか。2019/05/17

かんちゃん

9
初唯野未歩子さん。タイトルと装丁に惹かれ図書館で衝動借り。副題の「大人になりたいぼくと、子どもでいたいお父さん」そのままの作品でした。反抗期の男の子とお父さんの微妙な心の距離感を、丁寧に描いていて好感がもてます。女性の作者にも関わらず本当に上手だと思います。 自分の子どもにも将来読んでもらいたい作品ですね。2014/05/27

かっぺ(こと悩める母山羊)

9
大人に振り回される子どもの話。作者あとがきで、子どもが大人にならなければいけないのは悲しい、とあるが本当にそうだと思う。母親に置いていかれ、優しかった叔父は自分への好意ではなく単なる義務感で付き合っていただけ。父親は家庭を顧みない。それでもなんとか修復しようとする葉太。誰もが葉太への愛情は持っているけれども、それ以上に自分たちのことで手一杯で構えなくなっている。夏休みが終わって葉太は大人の事情を理解する寛大さと、待つ余裕ができたがそれは成長なのか。子どもにそういう思いをさせたくない、と感じた。 2013/06/06

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/5547691
  • ご注意事項