内容説明
私の左の二の腕には、何本も傷がある。ヤクザ同士が縁を結ぶ場面で、儀式に要る血を採った盃傷である。私は甘い性格の咎めで、ついに縄張り持ちの親分にはなれなかったが、盃傷は十一本もあり、見つめているとその一本ずつから、懐かしい顔が浮かんでくる。三十年近い極道渡世の中で著者が出会った、限りなくユニークな舎弟たちを深い愛情で鮮やかに描き出す。
目次
サンパウロは俺の縄張り―花札をボストンバッグに、ブラジルに渡った小俣進
自動車屋・敬司繁盛記―チンピラ時代に堅気にした島田敬司の侠気
韓国人・全栄植の渡世―日韓対抗ボクシング大会顛末記
片目のシゲは男でござる―男を売る場面を求めて生きるポルノ屋ゲリラ
ノミ屋の名番頭―われら、桜田門とかく戦えり
怪しい相撲取り・深山のモラル―ヤクザ社会に次々と騒動を起こした「ごっつぁん」体質
人相違反・中川重治の贈り物―口の悪いゴロツキが、たった一度、世間に恩返しをした
ロスにこだます色即是空―密輸部門担当の私の左腕は、米国で禅僧になっていた