内容説明
ふいに大きな水音がした。鯉四郎は思わず腰を浮かせた。竿を放り出し、枯れ葦をかきわけて、そのほうへ走る。水際には、赤い鼻緒の黒塗りの下駄がきちんと揃えて脱いであった…。浅草花川戸の十軒長屋に住む天然無心流の剣の達人・船田鯉四郎は、町道場の代稽古や傘張りのない日は必ず、釣りに出かける浪人釣り師。が、なぜか行く先々で難事件に遭遇する…。冴えわたる鯉四郎の剣と推理!釣り歴40年の著者が、釣りの蘊蓄を巧みに配して描く異色の時代小説。
目次
大鯉と仇討
フナと水茶屋の女
タナゴと辰巳芸者
ヤマメのような娘
ハゼと神隠し
イワナと女と死と
寒バヤ釣りと消えた女