内容説明
推理小説界の巨匠・江戸川乱歩が、戦後、昭和３０年に書き下ろしで発表した野心的大作「十字路」。伊勢商事社長の伊勢省吾は、日輪教の狂信的信者である妻・友子を嫌い、若い女秘書・沖晴美と恋愛関係にあった。晴美のアパートのへやに押しかけてきた友子を省吾は絞殺した。友子の死体をどこへ運ぶか。晴美とドライブした藤瀬ダムの古井戸が省吾の頭にひらめいた。キャディラックのトランクに死体を隠し、藤瀬へ向かう省吾は、新宿ガード下の十字路で突発事故に会った。そのすきに車内にもう一体の男の死体が出現していた。次々に発生する奇怪な事件のナゾは？新作「十字路」に中編名作「盲獣」も併せた豪華版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ｼ也
44
森村誠一みたいな展開の「十字路」も良いが、やはり「盲獣」。「盲獣」を読みたくてこれを買ったのだ。「人間豹」の江川蘭子と今回の水木蘭子が一緒の流れだとかぐだくだなプロットだとか気にしないよ。でも蘭子を殺すシーンはこれぞ性的倒錯... という感じて中々に良い。謎が解かれる訳では無く、延々と盲獣による殺人が描かれていくのは乱歩の真骨頂という感じで、乱歩はやはり推理よりも猟奇が好きだなぁと実感した2016/07/02
Yu。
24
偶然に二つの不幸が重なり合う事で更に自身を破滅ロードへと向かわせる男の倒錯サスペンス｢十字路｣(Ｓ３０)。病んだ男がさらに壊れる事で真の狂人へと覚醒していく妄執、残虐、淫靡な世界観はなるほど戦前の乱歩味｢盲獣｣(Ｓ６～７)‥ とまともな犯罪心理劇と狂った芸術劇の二篇から成る乱歩劇場ご堪能あれ。。2017/04/20
TKK
11
内「盲獣」を読む。校訂のため通読した乱歩自身があまりに酷い変態もので驚いたという、触覚に特化したエログロ。乱歩を「俺の乱歩」「私の乱歩」と呼ぶマニアの中にはベストに入れる人がいるはず。そして私も時々読み返したくなる。再読。2016/07/22
色々甚平
8
十字路はテレビドラマ風サスペンス。なので話としては特筆すべき点は特に見当たらない。しかし、犯人側の視点が多いため自分では完璧だと思い込んで安心しようとする点などの緊張感ある心理描写は細かく描かれていた。変態的な方はもう一作の盲獣。こちらは一見の価値あり。踊り子スターの銅像を按摩が撫でくりまわしているところから入るあたりでもう期待せざるおえない！目が見えないからこその楽しみ、快楽を追求し続ける按摩の狂っているとしか思えない精神は乱歩好きを満足させてくれると思います。2014/05/17
シルク
5
「十字路」のプロットは別の人が考えたものらしい。どうりで怪奇色がない乱歩らしからぬ作品。でもサスペンスものとしてよく書けていて面白い。「盲獣」は同じ犯罪の繰り返しでさすがに途中から飽きてしまった。2021/05/26
