内容説明
影男！その正体は、速水荘吉・綿貫清二・鮎沢賢一郎・殿村啓介・宮野緑郎と無数の名をもつやせた男。さらに小説家としては佐川春泥という名で知られ、その執筆する怪奇異風の小説は世にもてはやされていた。このふしぎな男は何をもくろむのであったか！どんな人間ももっているヒミツの裏側を探求するのが影男の目的であった。影のような人間に変化して。かくて、影男の出現するところ、一軒家の地下室で行なわれる闘人、地底のパノラマ国等々。奇々怪々な事件の連続であった。名探偵・明智小五郎の明推理は。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ｼ也
40
メディア祭り第一弾。影男といえば、アニメ「乱歩奇譚」に登場するcv子安の紙袋を被ったロリコ... 少女愛好家だったはず。と思いながら読んだが、実際は怪人二十面相を思い出させるキャラクターだった。「パノラマ島奇談」や「地獄風景」でお馴染みのパノラマ国のシーンは今回でも出てきて、ヌードの女性まみれの木や地面は中々に幻想的で乱歩先生パネえッス。と苦笑。でもまあ、千葉のネズミーランドよりかは面白そうだ。にしても、「陰獣」でも出てきた「春泥」という名前には乱歩先生のこだわりがあるのだろうか2016/04/25
ヨーイチ
28
乱歩との出会いは幼少期の購読本・少年・光文社（月刊漫画誌で鉄腕アトムと鉄人28号連載は豪華だった。）若い人の為に敢えて記すと60年代位までは結構、小説と読み物が載っていて、「マンガだけではありませんよ、教育にも宜しいデス」ってアリバイ作りでは無かったかと思っている。少年探偵団は乱歩のジュブナイルの象徴で乱歩の知名度の延命に力を貸した。ポプラ社の乱歩とルパン物が小生のお気に入りで、本作は初めて買ってもらった一冊だと思う、母親は複雑だったと思う。内容はまぁ教育的とはとても言えないし。続く2024/02/11
散文の詞
27
犯罪者の目線から書かれた小説で、前半部分の面白さは文句のつけようがない。 このままで一体どのようにこの小説が終わるのだろうかと思っていたら、殺人を請け負うという男が出てきて、最後には明智小五郎まで出てきて、まあ、それはそれでおもしろいんだけど、なんか、前半は何だったんだろ？って感じで終わってしまった。 昭和30年頃に書かれた小説だから、犯罪者がそのままになるっていう話にはできなかったんだろうけど、詰め込みすぎって感じかな。 でも、江戸川乱歩をあんまり読んでない人には、それなりに楽しめるかも。 2019/08/19
karatte
18
青空文庫新着。筋肉少女帯のアルバム『UFOと恋人』の中に「パレードの日、影男を秘かに消せ！」という楽曲があり、それが自分と〈影男〉とのファーストコンタクト。高校時代に知人宅で『影男』の文庫を見つけ、これが元ネタかと早速借りて読んで以来、20年以上ぶりの再読となる。 明智小五郎シリーズではあるが、登場するのは後半をかなり過ぎてから。メインは悪人どもの猟奇エログロナンセンスなピカレスクロマン。 この大捕物によほど満足したのか、本作を最後に明智小五郎はジュヴナイルのみの登場となり、大人向け作品から一切姿を消す。2019/08/01
東京湾
11
無数の名を持ち世の裏側を駆ける奇人・影男！なかなかに面白い。富豪へのゆすりや小説業で手に入れた莫大な財産、そして己の聡明な智力を駆使し、好奇心の赴くままに愉楽を求め跋扈する影男の姿は、読んでいて非常に愉快だった。特に物語中盤の想像力を刺激される艶めかしく鮮やかなパノラマ館の描写は流石乱歩、の一言。ただラストが意外とあっけなく、少し残念な気もしたが、やはり夢は覚めるもの、ということなのだろう。乱歩作品のあらゆる要素が入り乱れ構成された、ある種集大成とも言えるであろう物語だ。2016/04/07
