出版社内容情報
《第五回イーハトーブ賞受賞》
生誕百年に世に送るまったく新しい賢治の発見。
あとがき
宮沢賢治の精神を実践
元原子力資料情報室代表 高木 仁三郎さん―――10月8日死去 62歳
高木さんは宮沢賢治をよく読んでおられた。それは、私と同様に一人の科学者としての読み方でもあったが、高木さんの場合は「今、私たちはどこにいるか」と、現代社会と自らに厳しく問うものであった。
高木さんは著書「宮澤賢治をめぐる冒険――水や光や風のエコロジー」の中で、「雨ニモマケズ」が心によみがえってくるのだとも言われた。そして「サムサノナツハオロオロアルキ」と書いた賢治に思いをはせながら、自分も「常にオロオロして涙を流すところから科学者を始めよう。涙を流すことは断じて敗北ではない」と書いたのだった。
高木さんが95年に宮沢賢治学会・イーハトーブセンター(岩手県花巻市)からイーハトーフ賞を受けた理由もそこにつながる。イーハトーブとは賢治の造語であるが、彼の生きた故郷農村を理想化して命名したのだった。そういう賢治の精神を実践的に継承する活動に対して、この賞が贈られるのである。……
(宮沢賢治イーハトーブ館前館長、物理学者・斎藤文一)
(毎日新聞2000年11月18日朝刊『悼』より)
内容説明
「猫の事務所」の構想から、賢治の自然イメージを解読―。
目次
第1話 賢治をめぐる水の世界
第2話 科学者としての賢治
第3話 「雨ニモマケズ」と私