内容説明
アメリカとの戦争は何としても避けねばならなかった―。武官として米国滞在の経験を持つ山本五十六は、やがて真珠湾奇襲攻撃を敢行。世界を驚愕させる大戦果を挙げるのだが、半年後のミッドウェー海戦で惨敗。翌年、撃墜されて戦死した。家族や友人の証言に基づいて、戊辰戦争の宿命を負った男の生涯に迫る。
目次
戊辰の残歌
父母との別れ
会津の娘
華やかな雄飛
鎌倉の家
暗雲の下
ロンドン軍縮会議
海軍の葛藤
家族の絆と花柳界
虚実の狭間で〔ほか〕
著者等紹介
工藤美代子[クドウミヨコ]
1950年東京生まれ。ノンフィクション作家。『工藤写真館の昭和』(講談社ノンフィクション賞受賞)など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mazda
22
阿川弘之氏の説とは異なり、夫婦仲もとてもよかった、というのが工藤氏の見方のようである。確かに、映画でも仲のいい夫婦として描かれていたが、そちらが本当の姿なのかも知れない。戦争が始まるまでは対米戦争反対の立場を貫いたりしていて一見正しいように見えるのだが、いざ戦争が始まると現場に行かなかったり、ミッドウェーの責任を取らなかったりと、どうも腑に落ちないことが多い。本当の彼の姿はどういったものだったのだろうか?2012/12/14
はち
6
戊辰戦争からはじまり、太平洋戦争に終わる。山本五十六というと、連合艦隊総司令官にもかかわらず、戦死を遂げたイメージしかなかったが、三国同盟に反対し、航空機の時代が来ることを予測し、さらには証明した。その生涯は日本近代史の全てと言っても良いかも。骨太のノンフィクション。2011/11/29
future4227
5
山本五十六の名言といえば「やってみせ、説いて聞かせてさせてみて、誉めてやらねば人は動かじ」が最も有名であるが「中才は肩書きによりて現はれ、大才は肩書きを邪魔にし、小才は肩書きを汚す」というのも五十六らしい名言だ。著者は関係者や親族などから丁寧に取材をしており、事実関係の信頼性がかなり高く、先入観のない記述に好感が持てる。阿川弘之の著書に対してかなり批判的であり、五十六の妻、礼子の名誉回復を願う気持ちが強く感じられる。今まで様々な五十六伝を読んできたが、この一冊を読めば充分。五十六のすべてがわかる。2014/07/15
波 環
4
五十六をめぐり千代子という芸者さんと妻の礼子さんに関して阿川版での扱いに対しての批判としてこれを書き始めたという。山本が神だった阿川にとって、山本の裏面、弱さを描く要素として千代子はわかりやすい素材だったのだと思う。海軍さんの奥さんがしっかりしてるのも阿川にとっては当たり前で描きにくかったのかもしれない。高松宮日記が引用されていて、阿川先生はこの御日記の監修やってるけど、御日記読んだあと、海軍関係の作品を書き直したくなったろうなあ。工藤版はさらさらとしている。文学としては阿川版。資料として工藤版。2015/01/02
パブロ
4
連合艦隊司令長官に真珠湾攻撃。山本五十六って言ったら、これくらいしか出てこない私。だから、山本五十六ってどんな人?っていう興味をしっかりとこの本は応えてくれた。ノンフィクション作家のなかで、私の最も好きなこの著者。読みやすい文体で、きっちりと出生から死、その後の周りの人たちまで描いている。でもあまりにきれいに描きすぎているな〜と思ったりもしたり。だから、時折引き合いに出される五十六に否定的な阿川弘之の本と読み比べたくもなったりも…。とは言いつつ、今後この本なしには山本五十六は語れないじゃないかな。2011/11/22