内容説明
1996年、ヴェネツィアの至宝「フェニーチェ劇場」焼失!事故か、それとも放火か?謎に取り憑かれたジャーナリストの前に次々と出没する摩訶不思議な人々。傑作ノンフィクション。
目次
運命の夜
塵と灰
水位
夢遊歩行
ゆるやかな燃焼
トレヴィーゾのラットマン
ガラス戦争
移住者たち―最初のファミリー
最後の詩篇
あんな、はした金のために
コミック・オペラ
天使の落下にご用心
遺書を書きすぎた詩人
地獄再訪
オープン・ハウス
著者等紹介
ベレント,ジョン[ベレント,ジョン][Berendt,John]
1939年生まれ。「エスクァイア」「ニューヨーク・マガジン」他で活躍するコラムニスト、ジャーナリスト
高見浩[タカミヒロシ]
1941年東京生まれ。出版社勤務を経て翻訳家に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sasha
7
ヴェネツィアの至宝・フェニーチェ劇場の火災から3日後に当地に居を定めた著者が、そこで出会った人々を描いたノンフィクション。原題と邦題にまったく関連性がないけれど、いにしえのヴェネツィア共和国ファンにとっても楽しんで読めた。フェニーチェ劇場の火災消失を縦軸に、観光だけでは分からないヴェネツィアを描いているのがいいね。ああ、私もイタリア語さえわかれば住んでみたんだよ、憧れの水の都に。2019/06/22
ZEPPELIN
7
96年に焼失したフェニーチェ劇場にまつわる話、という内容ではない。邦題おかしいでしょうが。やはり主役は人間で、共和国時代に想いを馳せる地元民から、この街に惹かれて移住してきた人まで、三癖はありそうな面々ばかり。なぜか途中でウディ・アレンが逮捕される。人にも街にもどこか湿った雰囲気があるのも、この都市の形成の過程と無縁ではないのかもしれない。歴史を作るのも街を作るのも人間なんだなと改めて感じる。もしイタリアにおいて独立運動が起こるとすれば、それはヴェネツィアであると思う2015/09/04
砂出し天然コンキリエ
1
これは読んで良かった本。フェニーチェ劇場焼失の謎と再建のすったもんだ話が入り口となり、ヴェネチアの路地のように入り組んだ、観光では入ることのできない人間模様へと誘われる。フェニーチェの事件だけでなく、様々な物語が短編小説のように章を変えて現れる。E.パウンドやヘンリー・ジェイムズなどヴェネチアに関わりのある芸術家のエピソードは興味深く、文化的な香りのする名ノンフィクションだ。各エピソードには謎が残り、それは美術品のような街へ、運河のきらめきへと吸い込まれていく。読後はヴェネチアに何年も暮らした気分になった2012/11/15
しばた
0
フェニーチェ劇場の焼失と再建にまつわる話。読んでるこっちがハラハラしてくるほどの率直過ぎる著者の質問とそれによって明らかになる、ヴェネツィアの奇妙な人間関係には興味が尽きない。あと、著者がアメリカ人だからか、ヴェネツィアとアメリカに関する記述には多くのページが割かれている。歴史的文化財の保護とその支援に関する相互の複雑な感情的行き違いや、文化的、社会的差異による齟齬とその調整の難しさを感じた。老セグーゾの作品は見てみたい。2010/06/09