出版社内容情報
太平洋戦争終戦後、食べるのにも困っている少年たちと、現代の少年たちの青春が〈食〉を介して交錯する。
内容説明
1946年、戦争で両親と住まいを失った里見滋は、焦土と化した東京で飢えと貧困に苦しむ。放浪の果てにたどり着いた上野の地下道、そして闇市で、きょうを生き延びるためにもがき続ける。2020年、都内の私立高校に通う洲崎駿は、新型コロナウイルスの感染拡大によって自粛生活を強いられる。父の勤務先が倒産したのをきっかけに、平穏だった家族の日常は崩壊していく。ふたりの過酷な青春が74年の時を経て、鮮やかに交錯する。
著者等紹介
福澤徹三[フクザワテツゾウ]
1962年、福岡県生まれ。2000年『幻日』でデビュー(『再生ボタン』と改題して文庫化)。ホラー小説や怪談実話、アウトロー小説まで幅広く執筆。2008年『すじぼり』で第10回大藪春彦賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モルク
111
大戦後家族も何もかも失い浮浪児として生きる滋、そして現代このコロナ渦を生きる高校生駿、このふたりの話が交互に進んでいく。浮浪児の保護という名の監禁状態から逃亡し闇市で生きるようになる滋。負から立ち上がり、小さな社会での結び付き。みんなが貧しかった時代を波瀾万丈に乗りこえたまわりの人々のなんと魅力的なことか。一方高校生の駿はコロナによって父の失業、自らの罹患、両親の不仲…と最悪の状況に向かう。生活様式が一変した現在、再読の時は懐かしく思えるのかな。2つの話が最後の最後で繋がる。素敵な結末で、ほっとした。2021/10/23
おつぼねー
92
「生きることは食べること」…をテーマに戦中戦後の17歳とコロナ禍の17歳の食べて生きる力が交互に綴られ、やがてひとつの線になった時に、頬に一筋の涙が伝った。返却を繰り返し三度目の正直だったが、読めて本当に良かった。2021/12/18
ゆみねこ
90
戦争で家族も住まいも失い浮浪児になった里見滋、コロナ禍の今を生きる高校生の洲崎駿。交互に物語が進みラストで明かされたこと。戦後の過酷な時代が綴られる滋の章は魅力的な登場人物が多く読み応えがあり。駿も今の時代を如実に表しとても興味深く読了。良い本を読みました。お薦めです。2021/09/26
Ikutan
81
福澤さん初読み。読友さんの感想で読んでみたのですが、とてもよかった。戦後すぐの過酷な状況の中、逞しく生きる戦災孤児である滋と、令和の今、コロナ禍によって暗転した生活から、希望を見出だそうとする駿。17歳の二人を主人公に交互に進む二つの物語。大人でさえ、生きるのが大変だった戦後の焼け野原の東京で、飢えや寒さで苦しみながらも必死に生きる滋の姿は、胸に迫り目が離せず。彼を支える面々も魅力的。一方、コロナ禍の物語は、現状とリンクしていてめちゃリアル。残りページ僅かで、二つの物語が繋がる構成もお見事です。おすすめ。2021/10/20
yukision
78
図書館のお勧めコーナーで。終戦直後の焼け野原,コロナ禍の現代,それぞれの東京に住む10代の少年の成長が交互に描かれる。焼け出されて何もかも失った滋と,恵まれた環境で生活する普通の高校生駿とは比ぶべくもないが,それでも,それぞれの環境の中で苦しんだとき,一歩踏み出すことで力を貸してくれる人が出てくる。読んでよかった。2021/11/06