内容説明
両開きのドアを押して入るとカウンターがある。そこは西部劇の酒場…ではなく図書室だった。桜ヶ丘高校の図書部員・望美は今日も朝一番に部室へ行く。そこには不機嫌な頼子、柔道部と掛け持ちの幸治など様々な面々が揃っている。決して事件は起こらない。でも、高校生だからこその悩み、友情、そして恋―すべてが詰まった話題の不可資議学園小説が文庫化。
著者等紹介
長嶋有[ナガシマユウ]
1972年生まれ。東洋大学2部文学部国文学科卒業。2001年、「サイドカーに犬」で第92回文學会新人賞を受賞してデビュー。’02年、「猛スピードで母は」で第126回芥川賞受賞。’07年、『夕子ちゃんの近道』で第1回大江健三郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アマニョッキ
55
もう本当に好きなやつ。好きすぎてたまらないやつ。写写丸とカッパに捧ぐ一頁目にクスリとできるのは再読ならではの嬉しさ。この安定の日常描写と、意味のないことを書いているようで実は一切無駄がない文章。もうデレッデレになるぐらい大好きです。「嘘だろ、誰か思い出すなんてさー」とか、スティーブ・ブシェミとか、陣地を侵略するように箸を入れるとか、もうダム決壊のごとく押し寄せるセンス。ああ、もう好きがとまらない。そして全くレビューになっていない。ごめんなさい、好きすぎてもうなんもいえねぇ。2018/06/28
佐島楓
37
いいな、と思ってしまった。何の変哲もない高校の図書部室。そこに集う面々。当たらず障らず、というよりは一歩踏み込んだ、だけれども本当には相手のことを決してわからない生徒たち。本やコミックが好き、それだけでつながっているはずの高校生たち。ちょっと独特で、お気楽さの中の不穏にリアリティを感じた。面白かったです。2014/11/17
ぽてち
34
時間が経ってから気づくことや、時間が経ってから話すことはきっと大事なことに違いない。2020/04/20
ワッピー
29
カフェ読書会「Small talk」紹介本。高校時代の倦怠と小さな出来事と妄想とツッコミにあふれる実に楽しい本でした。クラスメイトの鬱、作家デビューした元教師、文芸部とのプチ確執、姿を見せない謎の読書学生、そしてどうでもいい会話の中で時は着実に進んでいく。遙か昔の自分の高校時代を思い出しても、この小説ほどにも事件はなくて、(男子校で帰宅部だったし、3年間でクラスが一度も文化祭に参加せず<涙)、どうでもいい会話の雰囲気は共通していたような気がします。またまたノスタルジーに浸れる本に当たってしまいました。2019/09/06
たぬ
28
☆4 長嶋氏5冊目。このストーリーも文体もかなり好き。図書室が舞台だし気負ってはおらず脱力しすぎてもいない絶妙な筆のバランス。部員同士ぎくしゃくすることもあるけど図書部は居心地がよさそう。教室では異端な者たちの集まりだって? 私も十分入部資格あるね。最後、望美の期待が実現しているといいな。2020/08/15