出版社内容情報
加門七海[カモン ナナミ]
内容説明
怪談作家の鹿角南は、従妹の嫁ぎ先、菊池家の古い土蔵で見つかった『目嚢』という古文書を預かる。そこに記された怪談に興味をひかれ、菊池家の歴史を調べようとする南だが、まるで誰かが邪魔するように、指が切れ、虫が湧き、一人暮らしの部屋に異変が起こり始める。迫りくる怪異は、止まることなく続いていく…。名手が描く、背筋が凍る傑作長編ホラー小説。
著者等紹介
加門七海[カモンナナミ]
東京都生まれ。多摩美術大学大学院修了。美術館の学芸員を経て、1992年に『人丸調伏令』で作家デビュー。オカルト・風水・民俗学などに造詣が深く、伝奇小説、フィールドワーク作品を中心に活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
196
従妹の嫁ぎ先は旧幕臣の菊池家。菊池家の蔵から見つかった文書を読み進むにつれて、怪異が起きる。文書の名は「目嚢」。耳にした怪異を集めた本「耳嚢」に対し、菊池家の屋敷を預かった高橋家の当主が目にした怪異を記した為に「目嚢」とした。顕になるかつての菊池家の罪。そして今も続く菊池家への呪い。埃の臭いや、旧い屋敷の暗がりが感じられる質感。従妹も遂に菊池家の因果を知り供養を決意するが、代々続く呪いを祓う事ができるのか。追い込まれる作家の様子と、その因果に引き込まれる様子が見事。息つく暇なく一気読み。絶品の和製ホラー。2017/08/27
KAZOO
122
最近この作者と三津田信三さんの怪異小説を読むことが多くなりました。この題名は、江戸時代の奉行の根岸の耳襄にならって絵草子的な観点からつけられたものでしょう。この小説は雨とかがうまい背景とかになっていてぬめっとした感じが出ています。読んでいてかなりイメージ的には怖い感じを受けます。この主人公のほかの話もあるようなので読んでみたいと思います。2020/11/11
sin
102
所謂、祟りというやつであるが、関わってしまった主人公の少しずつ次第次第におかしくなっていく有様と、その関係者の反応が興味深い。おまけにしまいにはそれを形振り構わず遠ざけようとする主人公の態度も例をみないものとして真新しい感じだ。ん?霊をみない??いや主人公は嫌というほど霊を見せられるのではあるが、作家という第三者的立場に現実逃避する形で理性的に判断しようとするあまり目を曇らせてしまう。人間というやつは見たいものしか見ようとしない典型のように感じて興味深い。そうそう作中のスイカと桃の例えは素晴らしい発想だ。2016/10/18
中原れい
89
作者を彷彿とさせる主人公の鹿角南、『祝山』以来の登場。今回はしっかりと因縁の中心にからめとられ、危ういところでした。細かいくすぐりもおおもとの仕掛けも怖いけど、ずっと背負わなきゃいけないものができた今後も考えると怖い。関わらないこと、って必要な人に限ってできないことになってること…加門さんの実話怪談にたびたび出てくるケースでしたね。絵を描くのも血筋なのか?と考えると子供の絵のことも蛇足ではない気がしてるのも、コワイコワイ。わからない何かもやっかいだけれど、人間の意思も怖いです。2016/11/07
nuit@積読消化中
87
「耳嚢」ならぬ『目嚢』!なるほど納得。「祝山」のような怖さはなくとも、古文書を解き明かして行った先ある話には、ひー!映像化出来ないよ!という凄惨な話も。いずれにせよ、生半可な気持ちで実話怪談には関わっちゃいけませんね。肝に銘じておきます。2016/11/28