内容説明
ようこそ。おいでくださいました。此処は、知る人ぞ知る伝説のホテル。運良く訪れることのできた宿泊客だけが、自分だけの秘密にし、他人に教えたがらないという「桃源郷」。真昼の幽霊のようにひっそり佇む、あのエレガントな白亜の西洋館こそが、“夏のグランドホテル”。そう。今宵の貴方のための、真夏の夜の夢…の舞台なのです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
眠る山猫屋
52
【日本の夏は、やっぱり怪談】に参加。廣済堂版『グランドホテル』の夏、星祭りは八月朔日に行われる。このグランドホテルからしか見えない流星群。様々な客が訪れる(招き寄せられる?)が、牧野修さん『めいどのお仕事』の客室係と交換手、バーテンダーたちなどプロフェッショナルたちがおもてなし。人間も人外も訪れるリゾートホテルでのクロスオーバーしていく事件。加門七海さんのリリックな燐寸職人の物語は透き通るように美しく暖かい。全体に怖さは薄めだが、爽やかな夏風のような読み心地。真夏の夜の夢はきっと悪夢。独りでみる昏い夢。2020/08/01
kasim
36
森の奥、海辺に佇む古風なホテル。幻想と恐怖の夏の一夜を文字通りグランドホテル形式で20人以上の作家が競作したアンソロジー、というだけでもう抵抗できない。わが身に迫る恐怖というよりウェルメイドな物語の連続で、毎晩少しづつ読んで楽しんだ。巻頭の中井紀夫がロマンティックで特に好き。あとはホテルに棲むミューズの悩みを描いた高野史緒、噺家のホモソーシャルな愛憎の飯野文彦、一編だけほのぼのの矢崎存美。妖しい女の頻出に疲れてきたところに、招かれざる客対応の最強メイドを登場させる牧野修に快哉を叫びたくなる。2021/08/26
しずかな午後
7
飛鳥部勝則「辿り着けないかもしれない」のみ読了。挿絵のようにコラージュ作品が配されている。自分を振った女性を追いかけて、男は海辺のホテルへとやってくる。迷宮のようなホテルの中で、メイドとして働く彼女の姿を追いかける。正統派な怪奇小説という感じ、まずまず。2023/03/17
込宮宴
5
8月1日に流星群が見られるというグランドホテル。流星群を見たものは願いが叶うという。これをテーマとした競作集。 宿泊客達は、従業員は、何を見るのか― 異形コレクション「グランドホテル」の姉妹編。 読後は、一旅行終えたような満足感と脱力感に浸れること間違いなし。2015/01/31
訪問者
4
故あって新幹線停車駅の近くのビジネスホテルに4泊5日の逗留をすることとなったため、その間に読了。高野史緒「ミューズ」、浅暮三文「お薬師様」、石神茉莉「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、鬼気迫る落語対決が描かれる飯野文彦「お迎え」、朝松健「異の葉狩り」、町井登志夫「人魚伝説」と本巻も読み応え有り。2023/09/01