内容説明
赤石岳山麓でペンションを経営する治宗は、夫婦の破局が因で愛育していた仔猪・ゴンタを山に放った。4年後、突如、南アルプス山中に巨猪が出現。それはかつてのゴンタだという。付近に出没し、荒れ狂う手負いのゴンタ。人生に傷ついた治宗は、山狩りからゴンタを救出することに自らの再生を賭けるが…。人間の心に潜む哀しみと、動物への限りない愛を描く巨編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ach¡
36
achiウリ坊に萌える♡の巻。クマ本は読み尽くした観があり生態もほぼ熟知しているが、猪もなかなかイケズぅな奴♥種は違えど野生に共通する点も多く、その生態に新しい興奮を覚えるです。不器用な生き方しかできない主人公が色々とイタい上、次から次に不幸の穴へ落ちるというw突っ込みどころ満載なのも嫌いじゃない。なんだけどやっぱりクマ本と同じく読後に心苦しさが残りますな。気高き彼らを荒らぶる魂へと貶めるのは結局人間の身勝手さなのだおぉぉ!毎度ヒトという生き物の傲慢さに反吐が出るんだおぉぉ!て読んでるこっちが荒らぶるぜっ2016/08/26
Space invader元ダンリック
4
結局のところ、主人公は再生できたのでしょうか?裏社会の圧力が、主人公を荒らぶる魂に駆り立てたわけで、それがなければ、静かな人生だったのでしょう。大成するためには、愛する家族さえ生け贄に差し出さねばならない、主人公の一生っていったい...。身体に弾丸が入ったままの状態でとる行動が、そのまま作品の命題かと。2016/11/28
うえぴー
4
西村寿行20番勝負その1。初寿行です。小説家志望のジャーナリストが、行き詰ってペンション経営をしているときに手負いの猪の子供(ゴンタ)を助けて飼いはじめます。これが悲劇の始まりで、小説家の道が閉ざされ、ゴンタを手放し、ペンションからも去らざるを得なくなり、妻を寝取られ、渾身のスクープをものにしたと思った矢先に巨大な権力に抹殺されそうになり……という転落人生。ここからどうするの!? という興味で後半のスパートは鬼気迫るものがありました。野生動物を飼う、ということが、こんなにも罪深いものだとは。いい作品です。2013/02/21
こたちゅう
2
西村寿行の作品は初めて読んだが、初出からこれだけ時間が経つとやや男臭さが鼻につくというか、時代感が違う感じがするが、エンタテイメント小説に徹していることはよくわかり、楽しく読めた。文学性というところからは離れているが、面白く読めたという点で価値を認めたい。しかしながら、既に忘れられた、過去のもの感がしてしまうのは、エンタテイメントの悲しいところか。文章の歯切れもいいし、最後まで一気に読ませる点もいい。忘れられてしまうには惜しい作品だと思う。2012/04/17
たくぞう
0
再読。西村寿行と大藪春彦になんの文学賞も与えなかった文壇や出版社はどういう了見だったんだろう。2021/11/04