内容説明
ボールを握りしめた右手を宙に浮かせて静止した。それからゆっくりとスパイクシューズの右足をプレートの縁に接触させ、ロッキングモーションに入った。上膊部がぐいと力強く持ち上がる。あの男が息を詰める。気配でそれがわかった。インパクトの瞬間に、最大の衝撃エネルギーを爆発させる。それまでの数秒間は、呼吸を停止したままじっと待つ。それがあの男のバッティングだった。2球目のストレートを、投げた。白いボールはまっしぐらに6フィート6インチの空間を突っ走って行った―。肉体と反射神経が音をたててぶつかりあう1対1の対決、個性と個性のぶつかりあいを描く、プロ野球ノンフィクションノベル。