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河出文庫
内地へよろしく

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  • サイズ 文庫判/ページ数 365p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784309413853
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

久生十蘭の全集でしか読めなかった傑作長篇の初文庫化。南洋の報道班員の従軍小説。戦況をつぶさに記述、内地との往還。

久生 十蘭[ヒサオ ジュウラン]
著・文・その他

内容説明

太平洋戦争末期、海軍報道班員として南洋にやってきた画家松久三十郎は、アラフラ海を枕に活躍する補給船員の山吉船長、カムロー、どん助と出会う。彼らと、軍人、兵隊との交情。そして、故国へ帰り、慰問の便りの縁で若い女性と会う。やがて、再び戦地へ。報道班員を経験した十蘭だから書けた、最高の“戦争小説”が初めて文庫に。

著者等紹介

久生十蘭[ヒサオジュウラン]
1902年、北海道函館生まれ。作家。函館新聞社に入社後、上京、岸田国士に師事。渡仏し、演劇論を学ぶ。帰国後、『悲劇喜劇』の編集に従事、演出も手がける。『新青年』などで言語実験を駆使した推理小説、伝奇小説、珠玉の短編群を発表。1957年死去。主な作品に、「鈴木主水」(直木賞)、「母子像」(国際短編小説コンクール1位)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

こまったまこ

14
最後に「え?」となり、今日一日中仕事中も頭の隅で考えてしまった。久生十蘭氏は初読みだが畳み掛けるような知的かつ諧謔の溢れる言葉の洪水に圧倒された。語彙の多彩さに刺激を受けた。主人公が海軍報道班員という点に引かれて読んだが戦争を批判するような内容ではなく戦地で懸命に一途に戦う兵隊たちを悲惨で絶望的な状況を覆い隠すようなユーモアのある文体で描いている。出てくる人が皆心の優しい人たちばかりで誰も死なないで欲しいと願いながら読んだ。この時代の人たちの心の純粋さ文化的なものに対する教養の深さに憧憬を覚えた。2015/11/25

あ げ こ

13
死地に在る人々の優しさや陽気さが沁みる。何気なくて素朴で、忘れ難いその優しさもすべて、当然のように失われてしまうことが悲しい。わかり切っている事が堪らなく悲しい。しかしどこまでも久生十蘭。凄惨さの上に被せた可笑しさ。知っているあの人、あの場所。戦場に対し、悲しみと共に抱くのが懐かしさと可笑しみであると言う不思議。場面を結び、お話を運ぶ軽妙さには妖しげで魔法めいた魅力を感じる。言葉もまた豊かに色を変え。結末にさえ油断は出来ず、役目を果たし終えた身をベリベリと剥がす、躊躇いのない音が不気味かつ鮮やかに響く。2015/08/28

yamatoshiuruhashi

9
大東亜戦争末期、海軍報道班員となった画家を主人公とする物語。太平洋最前線の孤島へ望んで赴任した主人公は、生きたまま鬼となろうとする人々と暮らし心を一にする。一旦は生還したものの再び望んで最前線へ復帰する。1944年、サンデー毎日連載の小説であるが、連載期間にサイパンの陥落をはじめ劣勢が強まり、内容にリアルタイムに反映されている。絶望的な状況下、内地での恋愛物語も織り交ぜユーモアさえも湛える。読中は翼賛的御用小説かと思ったが、最終章にただ一度だけ出てくる「私」により作者の冷静な意図が明確になる。参った。2015/09/15

Aminadab

6
昭和19年7~12月に週刊誌連載。戦地と銃後における戦争遂行を主題とするエンタメ小説で、当然国策に協力的、戦後長らく単行本が出なかった。しかし力作だし、成功作だと思う。アラフラ海を行く機船26号(18トン)の乗組員三名はいきなり読者を鷲掴みにするし(とりわけ八重山出身のカムロー)、内地では銚子のすぐ裏にある外川漁港の面々もキャラ立ちがすごい。お見合い作戦と東京見物も読者の予想を次々斜め上に裏切っていく。結末は最初の構想通りかやや疑わしい。現実の戦況から仕方なかったか。とにかく面白いですよ。お薦め。2019/09/25

Kotaro Nagai

6
本日読了。十蘭の小説はどれも面白い。1944年週刊毎日に半年間連載された作品です。戦争まっただ中に書かれた作品なのです。主人公の画家松久三十郎は海軍報道班として南方の前線を訪れます。十蘭自身実際に報道班員として南方に行っており、その体験は「従軍日記」で読むことが出来ます。この体験が作品に十分生かされていて、生き生きと活写されています。内地へ戻っての女性二人、ヨシ子さんと琴子さんがとても魅力的で、彼女らをめぐる人々の人情も素敵。十蘭の筆力の冴えがうかがえる傑作です。2015/08/05

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