内容説明
津村の描く作中人物で特徴的なのは、自立していることである。周囲に流されない。ゴロ合わせみたいで嫌味だが「自律的精神をもって自立している」のである。それは苦境にあって客と心中する奴女郎(「海鳴」)も、南海の孤島で処刑される初菊(「黒い潮」)も同じである。決して情況に流されない。とにかく、ここに取りあげた作品群から、津村文学の真執さを汲みとって欲しい。逆境の中でも真執に生きる。それが津村節子の描く人物像だからである。ユニークな実感的小説論。
目次
1 芥川賞への長い道―「浮巣」「さい果て」「玩具」
2 街の灯が燦めいた夜―「重い歳月」からの脱出
3 闇の向うに何を見た―苛酷な女性三部作
4 美神と毒薬が炸裂―芸術家小説三部作
5 文学修業の青春群像―自伝小説三部作
6 「流星雨」―敗者を追い打つ明治維新
7 短編で描く様々な人生―ドキリとする深層心理の断面
著者等紹介
坂本満津夫[サカモトマツオ]
昭和6年(1931)栃木県に生まれる。日本文芸家協会会員、同人誌「日本海作家」の同人
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