内容説明
この小説は自分のことを書いていると思いつめた男の危険な行動（「エロトマニア」）、マンションの惨劇がフラッシュバックして襲いかかる女の苦脳（「デジャヴュ」）、何者かが人の記憶操作をしていると勘繰った女の疑念（「ゴールデンアップル」）―正常な日常が歪んだ世界へ徐々にずれてゆき、狂気が複雑に絡み合う。人が壊れゆくその瞬間をじわりとあぶり出し、どろりとえぐり出す、渾身の連作短篇。
著者等紹介
真梨幸子［マリユキコ］
１９６４年宮崎県生まれ。２００５年『孤虫症』（講談社刊）で第３２回メフィスト賞を受賞し、作家デビュー。以後、精力的に作品を発表し、人間心理の奥を深く掘り下げる作風で人気を得る（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Satomi
73
最初の章は「エロトマニア」これは「情熱精神病、あるいは恋愛妄想。ほとんど接触がない相手に一方的な恋愛感情を抱き、自分も愛されているという妄想が全生活を縛りつける症状。」という意味。これがハマった!!ゾクゾクするエンディング!!!真梨さんにしては分かり易い短編と思っていたらとんでもない!!短編8話でそれぞれ独立した物語であるが、実は最初から最後までどこかでつながっている連作。繋がりが見え始めると油断出来ない!!時系列は前後するし、人物もあちこちの話に登場してくる。狂気まみれの真梨ワールド!!!!2016/01/11
Shimaneko
45
最近、どうも湊かなえがいい話路線に転向したっぽいので、満を持してw 初・真梨幸子。ちなみにこれも連作短編集だけど、長編のつもりで一気に読まないと誰が誰だか状態に。いや、ブラックなうえに芸が細かいね。生協とか派遣カーストとか。こーゆー意地悪かつ下世話なのが読みたい気分だったので、とっても満足。2015/01/23
なな
40
あーー いつもながら 真梨作品は、頭がスパークするー。でも、読んじゃうんだよねー。名前は違うけど、ほとんど登場人物が同じにみえてくるよ(笑)2016/11/14
オヤニラミ
40
う～ん、なかなか理解するのに難しい。全8篇からなる短編集でありながら、゛フレンジー゛に連載される「あなたの愛へ」と言う小説で繋がっている物語。登場人物も勿論、妄想と現実が入り乱れ頭がこんがらがってしまいます。著者の「殺人鬼フジコの衝動」もなかなか難しい物語でしたが、どちらもやはり不思議と読む手は進められてしまう面白さがありました。再読せねば…2016/11/10
むぎじる
34
連作短編集。人には見せない心の奥底に隠した黒い部分。凝縮されたそれが、パチーンとはじけて押し寄せてくる。合わない歯車を無理やり動かしているような、黒板を爪でひっかいてしまったような、心地悪さがつきまとう。思い込みの強い人間とは何て怖い存在なのだろうか。「こうしてはいけない。そうしたらこうなるよ。」まるでグリム童話のようだった。2014/04/19
