内容説明
オール黒人キャストのミュージカル『ポギーとベス』の公演を、冷戦下のソ連で成功させるべく奮闘するアメリカの劇団とともに過ごしたどたばたの日々を熱気たっぷりに描く著者初のノンフィクション・ノヴェル『詩神の声聞こゆ』。京都で映画撮影中のマーロン・ブランドを取材し、彼の生い立ちや人生観を赤裸々に暴き出したルポルタージュ『お山の大将』に加え日本人についてのエッセイも収録。カポーティ・ファン必読の一冊。
著者等紹介
カポーティ,トルーマン[カポーティ,トルーマン][Capote,Truman]
1924‐84。ニューオーリンズに生まれ、19歳のときO・ヘンリー賞を受賞した短篇「ミリアム」でデビューした。処女長篇『遠い声 遠い部屋』で文壇の注目を集め、南部の輝かしい星、早熟の天才と呼ばれた。その後、様々な小説技法を試みる一方、ジャーナリズムに関心を示し、中篇『ティファニーで朝食を』、短篇編『夜の樹』、戯曲『草の竪琴』を発表、映画脚本も手がけた。1966年にはノンフィクション・ノヴェルの大作『冷血』を出版。晩年は、アルコール依存症と薬物中毒に苦しみ、84年に心臓発作のため急逝した
小田島雄志[オダシマユウシ]
1930年生、東京大学名誉教授、東京芸術劇場館長、英文学者、演劇評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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神太郎
21
前巻よりもこっちのほうが好きかもしれない。マーロン・ブランドが日本で撮影した「サヨナラ」という映画の裏話とマーロン・ブランドの内面にせまった『お山の大将』がすごくいいね。ブランドがちょくちょくいいことをまた言うんだもん。役者として役になりきることや映画にかける熱意も感じられる。カポーティのドキュメンタリーの中ではマーロン・ブランドを役者としては一流だけど頭は悪いとかなんとか言ってたけど、この中では知性をものすごく感じる。そして、内面に切り込んでいけるだけのカポーティの取材力と洞察力に脱帽。2023/05/28
メルコ
2
冷戦期にミュージカル「ボニーとベス」のソ連での公演を追った表題作と、京都滞在中のマーロン・ブランドを取材した「お山の大将」などを収録。散漫な印象も受けるが、半世紀以上前にショービズの世界で悪戦苦闘していた人達の姿に惹かれるものがある。ソ連でのミュージカルの反応に一喜一憂するところが興味深い。2018/01/09
Aoka
2
ブロードウェイの黒人キャスト・ミュージカルが旧ソ連へ巡業した際、同行し書かれたエッセイというかノンフィクション?1950年代(かな?)の雰囲気が味わえます。2010年代なので当時の世相をいろいろ想像してしまいました。「詩神の声聞こゆ」という言葉がすきです。2012/12/02
Manami Sato
2
表題及び副題は 「砲声ひびくとき詩神の声とだえ、砲声絶えるとき詩神の声聞こゆ」 「犬は吠える、がキャラヴァンは進む」 から来ているようです(どちらも登場人物の発言)。カッコイイ。 “お山の大将”の中で、マーロン・ブラントが、日本女性のくすくす笑いが不可解、みたいな発言をしているが、漱石の小説にもそんなこと言ってた人がいたような。“こころ”だったかな。言われてみれば確かに不可解。 2012/03/11
砂出し天然コンキリエ
2
アメリカのミュージカル『ポギーとベス』レニングラード公演につき従って、資本主義西欧から旧ソ連社会主義国へと汽車で向かっていく。国境を超えてい行く時の緊張感や、異世界に入った時の張り詰めた空気が印象的だ。ルポ形式で、出来事に夢中になって読んでいると、視点があのカポーティなのだということを忘れてしまう。それくらい客観的でドライな視点を保っているが、汽車から見えたソ連の風景や気温などに、カポーティらしい胸に迫る筆致がうかがえ、さすがと思う。解説で青山南さんが後半の方が良いと書いているが、私は前半が好きだった。2011/02/18