内容説明
ド派手な舞台に華麗な衣裳、奇想天外な物語に魂をゆさぶる音楽、そして、湧き出す情念そのままに歌い上げる歌手たちの声―。イタリアで生まれて四〇〇年、オペラは今なお世界で、「最強の総合芸術」「娯楽の王様」として君臨し続けている。そこでは、王侯貴族のような豪華絢爛な気分を味わってもいいし、形式美を楽しんでもいいし、残酷な悲劇の結末に感涙してもいい。オペラに正しい見方はない。いや、あらゆる見方が正しいのだ。「命をかけるべき最高の遊戯」とまで言い放つ偏愛主義者が説く、入名書でかつ極め付きのオペラ至上論である。
目次
第1章 ドン・ジョヴァンニの正体―モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』
第2章 楽壇のナポレオン―ロッシーニ『アルジェのイタリア女』『ランスへの旅』
第3章 歌姫たちの超絶技巧―ドニゼッティ『ランメルモールのルチア』、ベッリーニ『ノルマ』
第4章 救いのないマッチョ・オペラ―ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』『運命の力』
第5章 主役を操る悪役―ヴェルディ『オテロ』
第6章 極上なる催眠―ワーグナー『トリスタンとイゾルデ』
第7章 「蝶々夫人」と息子の物語―プッチーニ『蝶々夫人』
第8章 完璧なるマニエリスム―R.シュトラウス『ばらの騎士』
第9章 オペラではすべてが許される―ショスタコーヴィチ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』
著者等紹介
島田雅彦[シマダマサヒコ]
1961年東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒業。作家。83年『優しいサヨクのための嬉遊曲』でデビュー。84年『夢遊王国のための音楽』で野間文芸新人賞、92年『彼岸先生』で泉鏡花文学賞、2006年『退廃姉妹』で伊藤整文学賞、08年『カオスの娘』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。日本文藝家協会理事。現在は法政大学国際文化学部教授も務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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