感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
今ごろになって『虎に翼』を観ているおじさん・寺
71
1965年に出た本だが、いまだに版を重ねる坂本龍馬本である。龍馬研究が進んだ今読むと、些細な部分から傷みはじめている感はあるが、本質的に古びていないのは、この本が坂本龍馬伝というより坂本龍馬論だからかと思う。歴史好きからすると史実そのままが良いのだが、「人民」「民衆」等の言葉を使って「革命」を論じる1960年代らしさが私は苦手である。記述は「…だろう」「…という」で終わる推論も多いので、龍馬の史実を知りたい人は、近年の伝記を読んだ方が絶対に良いが、「昭和に龍馬はどう語られたか」という史料的価値はある。2019/01/07
nobody
10
私が“ジャイアンの父ちゃん効果”と呼ぶものがある。のび太がタイムマシンを使ってジャイアンの父ちゃんを突き飛ばして車にはねられるのを助ける。だが「助けてくれてありがとう」とは感謝されずに「父ちゃんを突き飛ばしやがって」とジャイアンに殴られる。平尾道雄は龍馬を「明治維新史の奇蹟的存在」とした。歴史上の奇蹟者たるにはエピステーメーから脱していなければならない。必ず同時代人からは憎まれ抹殺される。吉田松陰は本質・理念面における奇蹟であり、坂本龍馬は現象・現実面における奇蹟であった。松陰は真理を摑んだがそれは生死を2025/05/02
穀雨
7
海援隊、船中八策、お龍との新婚旅行など、個々のトピックは知っていても時系列ではわかっていなかったので、その生涯を簡単に跡づけることができてよかった。幕末維新の動乱を民衆のエネルギーの発露とみているのは、刊行された時代の流れか。戦前はまったく知名度がなかったとも聞くので、死後の評価の移り変わりにも紙幅を割いてもらえたらよかった。2025/02/28
amabiko
4
今から約50年前、『竜馬がゆく』未完結の時期にでたアカデミズムからの龍馬伝。『竜馬がゆく』により固定化されてゆく龍馬イメージとは無縁で新鮮。ただし「世界資本主義からの日本の独立」「封建日本の改造」「民衆の解放」といったマルクス主義史観が基調になっている点は、龍馬の個性を捉える上で必ずしも適していない。また、松浦玲『坂本龍馬』などにより史料批判が進み、現在では使えなくなった史料がそのまま用いられていて当惑する箇所も。しかし、時系列に沿った叙述で、読みやすさの点だけで言えば、松浦『龍馬』よりは優れている。2014/09/16
denz
3
刊行が1965年で、90年代までオーソドックスな研究者が龍馬をほとんど論じることがなかったというわけで、最もよく読まれたであろう研究者による龍馬論。暗殺の犯人を本文で述べず、注で見廻組が「定説となっている」という書き方や、暗殺時に中岡と挙兵倒幕と時期を待つよう自重を促したとの推測が書かれたことで、その後の薩摩黒幕説などの「異説」の想像を促すきっかけになったかもしれない。2011/10/05
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- 和書
- 渡辺達正銅版画集