内容説明
混沌のガリアを纏めあげた恐れを知らぬ若者ウェルキンゲトリクス。政治家人生も終盤を迎えポンペイウスへの劣等感に苛まされるカエサル。対照的かつ運命的な男と男が鎬を削る。佐藤賢一版『ガリア戦記』誕生。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
13
カエサルの「ガリア戦記」を元に敗れたガリア側から再検討する 反乱の指導者ヴェルチンゲトリクスを英雄に、ローマのカエサルを臆病者に描く。直木賞受賞後初の書き下ろし。 紀元前五十二年、美しくも残忍な青年ウェルキンゲトリクスは混沌とするガリア諸族を纏め上げ、反乱軍を率いローマに牙を剥いた。対するローマ軍総督カエサルは、政治家人生も終盤を迎えポンペウスへの劣等感に苛まされていた…。若きガリアの王とローマの英雄—男と男が繰り広げる苛烈な戦いの果てに、二人が見たものは。直木賞作家の渾身長篇。 1999/10/05
マッピー
12
この作品のカエサルは、さえない中年男なのである。対するガリアの諸部族をまとめ上げたウェルキンゲトリクスはまだ若く、そして美形なのでございます。そうなると当然読者は、判官びいきも相まってウェルキンゲトリクスを応援すると思うでしょう?ところがこいつがまた、見た目に反して粗野で下卑たやつなのです。ふたりとも本当に情けないやつなんですが、最後はちょっとかわいそうになってくる。ウェルキンゲトリクスがぶつぶつひとりごちながら「へへ、へへ」って笑うのが、矢吹丈に思えてしょうがない。とりあえず立てよ、ジョー! 2018/07/12
TheWho
7
欧州史を題材に歴史作品を得意とする直木賞作家の著者が、「ガリア戦記」のガリア人の総蜂起からアレシアの決戦迄をウェルキンゲトリクスとカエサル双方の視点で描く歴史絵巻。塩野七生の「ローマ人の物語」では「ガリア戦記」を土台に、英雄カエサルを淡々と描いているのとは異なり、ガリアの若き英雄としてのウェルキンゲトリクスと、ローマの圧政者で盛りを過ぎた壮年カエサルとの戦いを、世代間の戦いに比喩しながら劇的に描かれている。史実とは異なる点が多々あり少々困惑する点も感じられるが、歴史物語として面白く読めた一冊でした。2014/06/03
みさ
5
ガリア戦記は塩野七生で履修したが、今作はそれをガリア側から描き、「属州化の優等生」と呼ばれるガリアでも征服される際には当然理不尽なことがいっぱい…という作品ではなく、若い美形のリーダーと相対した中年貴族が内省を深める話であった。大河要素は薄く戦争のダイナミズムはないが、ガリアリーダーのウェルチンジェトリクスとカエサルの人間的対比で話は進んでいき、カエサルがウェルチンに当てられてどんどん意志力を高めていく様が面白い。2023/07/20
neimu
3
中年男の再生譚2007/06/20